「寒いなぁー…」
「…寒いっすわ」
周りは白銀世界。12月の今日、つまり大雪警報が出た次の日。練習なんて出来ないはずなのに俺達四天宝寺テニス部は何故かコートにいた。
昨日。外は大雪。コタツに入ってウトウトしていると突然鳴った携帯。ディスプレイを見れば白石蔵ノ介の文字。
「んー…もしもーし…?」
「明日10時にテニスコート集合な」
「蔵ノ介さーん?言ってる意味がよく…」
「部長命令や」
「大雪ですよー…?」
「明日には止んでるやろ」
「…そうですか」
回想終了。
で、今日白石に言われた通りにテニスコートに来てみれば一面真っ白。雪が50cmは積もってた。俺が来た時にはもう金ちゃんや謙也は来ていて雪合戦や雪だるまを作って遊んでいた。子供やなぁーなんて思いつつも頬が緩むのは俺も馬鹿の仲間入りらしい。
「今日は雪で遊ぶでぇー!」
現在10時15分。テニス部のみんなもちゃんとコートに集まって、オサムちゃん主催雪で遊ぶぜ四天宝寺っ子大会(なんやねん、このふざけた大会名)が始まった。
銀さんと小石川は雪だるまを静かに作っている。…いや、雪だるまの形おかしいんやけど。合掌してはるし頭にパセリ乗っとるやん。小石川が左手を作っているがちゃっかりパセリを持たせている。可哀想な雪だるまやな…。
謙也と金ちゃん、千歳、白石は雪合戦。謙也と白石対千歳と金ちゃん。
「んんーっ絶頂」
「あだっ…!」
さ、流石聖書。そして部長。無駄のない動きで金ちゃんを仕留めおった。一方の千歳と謙也は…。
「…あと16球たい」
「浪速のスピードスターの方が上っちゅー話や!」
テニス並の素晴らしさだった。千歳は無我を発動させてるし、謙也に至ってはテニスしてる時と同じように顔が真剣や。
小春と一氏は…見んでも解る。二人だけの世界や。雪合戦の戦場を二人で鬼ごっこしてはる。小春は計算してんのか解らんけどちゃんと雪玉を避けているが、一氏は…ごっつ痛そうや。ボコボコ当たってる。それでも小春を追いかける姿勢に乾杯や。
「光は行かへんの?」
俺の隣で寒そうに手を擦っている光に問いかける。頬が寒さでほんのり赤く染まって可愛い。言ったら叩かれるので言わないけど。
「…寒いの苦手なんすわ」
「光の体温低いもんなぁー…」
以前光に平熱を聞いたら35℃やって。俺は平熱が高い方やからよう解らんけど多分この寒さも光には氷河期みたいな寒さなんやろなぁって思った。
「光」
「……何してるんですか」
かじかんだ指先を繋いでいた
(繋いだ手は俺よりも冷たかった)
(少しだけ指先に力を込める)
(温かくなるように、と)