「委員長!名さんが!」
草壁の声がこれほど脳裏に響いたことは無い。急いで事情を聞きだすと、どうやら僕に恨みを持つ上級生に囲まれているらしい。
数分前に部屋を出た時の名の笑顔を思い出す。自然と目に険が宿る。僕のモノに手を出すなんて、いい度胸だ。
学ランも羽織らずに体育館裏へ急ぐ。トンファーはもうすでに両手に握られている。今の僕にゆっくりいたぶって殺すことなんてできない。一撃必殺だ。運が良いと思え。
超高速で体育館裏に着く。しかし僕の目に映ったのは、
「ワオ」
地に伏す数人の男子生徒と、その中心に立つ名。どうやらまだ僕に気付いていないらしい。僕は珍しく乱れた服装を少しただし、トンファーをしまってから近付く。そこでやっと気配を察してか、名が振り返る。
「恭弥……!」
その目は驚きに見開かれていて、恐怖の色は全く見えない。
僕は地に伏す1人の不良を足で軽く蹴り、上を向かせる。特に目立つ外傷は無い。
「名、また素手を使ったの?」
「うっ……だって武器無かったし、武器で打ったら痛いし……」
今更ながらそんなことを言う彼女に少し呆れ、ため息が漏れる。
それにしても、と下を見る。明らかに体格のでかい男子生徒5、6人だ。あっちもまさか返り討ちに遭うとは思わなかっただろう。
名は、強い。僕が認めるぐらいには、強い。でも、それでも、名は女子。そして僕の彼女。
ム。忘れていた怒りが再びこみ上げ、とりあえず足を乗せていた不良を蹴っておく。そして未だにその場から動かない名に近付く。
よく見れば肩が少し震えていて。だから無理するな、って言ってるのに。
あと3秒、肩に触れる。あと2秒、僕に抱きつく。あと1秒、僕の胸に顔をうずめる。そしてゼロ。綺麗な涙を流す。
名の頭を撫でる。いつもこうだ。明らかに悪いのは相手の方なのに、倒した後に後悔の涙を流す。優しすぎる。
名の手を優しくつかみ上げると、手の甲からは少し血が出ているのに気がついた。眉をひそめる。僕の名に傷を残すなんて。
相手を出来るだけ一発で、優しく撃退する。それが名の戦い方。そして傷つくのは自分1人だ。
倒れている不良どもを咬み砕きたい衝動にかられたが、今はそれよりも名優先だ。
持っていた手を口元に引き寄せる。そして舌を傷に這わせる。まるで名の血を味わうように。
「ひゃっ…きょきょ恭弥……?」
「何?」
「何…って……!」
真っ赤に染まる頬を見上げてぺろりともう一回舐める。舐めるごとに名は過剰なほどの反応を見せる。滅茶苦茶にしたくなるほど可愛い。ごく素直にそう思う自分に驚きつつも行為をやめない。ついには血が出ている部分を通り過ぎ、指まで舐める。
一本一本丁寧に、甘噛みしながら、執拗に。
すると名の顔が赤いだけでなく上気してきていることに気付く。心なしか息も荒い。口角が上がる。
「ねぇ、名。どうかした?」
耳元で低く囁くと異常なほどに肩がビクッ、と動く。
本当に、可愛いんだから。あぁ、そうだ。怪我をしたなら、手当てをしなきゃ。
ね?名。
「応接室、行こうか」
僕の彼女は
(その時の名は僕の背後に悪魔の尻尾を見たらしい)(なんてまったくもって失礼な子だね)
end.
THANKS 2000HIT !!!
>> ワオ的甘夢
えー、日和様本当にごめんなさい!平謝りです!予想以上の駄作になってしまいました。←
長く待たせながらもこんな出来という…orz
ていうか『ワオ』って一回言っただけじゃん!甘というより微妙にエロい!
本当にこんな出来で申し訳ありませんでした><
2007/08/24 初版
2010/04/10 改稿 ゆん