ひらりひらりと舞い降りてきた雪を見て、隣に座ったハイネは深く息を吐いた。まるでそれが邪魔なものであるかのように。
訊いてみれば、別段そういうわけではないらしい。なんとなくだそうだ。すでに雪が降り積もって真っ白になった路を見ながらその返答を聞いていた。
「ハイネと、おなじいろ」
彼の白銀の髪を見上げる。銀世界に反射して、きらきらと光っていた。きれいだ。
「そうだな」
ハイネは苦笑いにも似た笑顔を浮かべ、まぶたを下ろした。ふう、と白い息を吐いた。
「まだ、帰りたくないんだね」
彼は答えなかった。
わたしは雪をすくい上げ、丁寧に丸め始めた。
わたしがひとつゆきだるまを作ってしまう頃には、ハイネの肩に雪が積もっていた。
それを見てやっと外の寒さに気が付いた。くしゅん。小さくくしゃみをする。
「さむいね」
「鼻、赤いぞ」
「ハイネはさむくないの」
「俺は別に」
「そうかな。息が白いよ」
「気温のせいだろ」
「とりあえず、もう、おうちに入ったほうがいいね」
今度はうなづいた。気が済んだのだろう。
早々に教会の中に入ろうとしたハイネをおいて、近くの茂みへと向かった。収穫してきたものを隠しながら戻ると、彼は呆れた表情でわたしを見ていた。
完成したゆきだるまに、真っ赤な木の実と小枝をつけた。
「あはは、ハイネだ」
「どこが」
「赤い眼と白い頭」
自慢げに胸を張れば、やっぱり静かに笑われた。その反応に満足し、ハイネの手を握った。そのまま気だるそうなハイネの手を引いて、教会へと足を進める。
「ハイネ、おうちに帰ろう。ビショップも、ニルも、待ってるよ」
「こけるぞ」
「こけないよ」
そう答えたそばから足をすべらせてこけてしまった。ハイネはふきだしていた。
「言ったろ」
放れてしまった手を引かれる。全身についてしまった雪を、乱雑に払われた。顔についた雪だけはそっと拭いてくれた。
その手は、やっぱり氷のようだった。
空はまだ灰色ににごっている。路は子どもたちの小さな足跡が点々と残っている。
銀世界の中に、鼻の頭を赤くしているのはわたしとハイネだけ。
「行くぞ」
やさしく笑うハイネには、白い雪がよく似合っていた。
「うん」
冷たいハイネの手を放さないように、冷たくなったわたしの手をぎゅっと絡ませた。
銀世界にふたりきり