無色に帰せよ 02


何を言っているのだろうか。男らは口ピアス男を凝視している。


炎とは、何の話だ。


「リングに炎が、」
「んなワケねーだろ」
「あら、アタシも灯らないわよ」
「…ミーもですー」
「おっかしーな」
「俺は灯るぞぉ」


わたしを取り囲んでいる四人は全員各自の指輪を見つめている。目を動かして見てみると、ロン毛男だけはその指輪に鮮やかな青色の炎(?)が燃え盛っていた。指輪に炎が灯るなんて、見たことがない。手品の類だろうか。しかしあんな色。


「なんでスクアーロだけ。ちょっと貸してみろ、って、あ、出てきた」


ロン毛男の所に近付いた前髪男の指輪にも、赤色の炎が灯る。続いてぞろぞろとそちらに移動した男らの指輪にも全て炎が灯った。
唖然としていると、ボスと呼ばれた男がわたしの直ぐ目の前に来ていることに気が付いた。こんなに近くに。震えが一層酷くなる。


「…おい、てめえ何をした」
「なに、このガキがしたの?」
「炎を出なくさせたのかぁ?」
「わっわたしは、なにも…!」
「嘘を吐くな」
「っあッ、」


ボスの男に頭を足蹴にされた。皮膚が切れ、血が流れる。こんなにいとも簡単に血が出るとは。わたしはただ痛みに耐える。


「ほん、とに、何も、」
「…てめえ、仲間は居るのか」
「いません!本当に、」


「失礼します!捜査報告に参りました!」


バンとドアを大きな音を立てて入って来た男に、一同の気は逸れた。わたしは息を吐く。もういやだ。怖い。早く帰りたい。


「言え」
「はい!侵入者は突如庭に現れております!そのときの周囲の炎反応も確認しましたが、一切ありませんでした!区域内を全て調査いたしましたが、何一つ誰一人いませんでした!
 更に申しますと!侵入者の周囲半径1メートル以内に仕掛けていました炎を仕様したトラップは反応しておりませんでした!1メートル区域外は全て正常に作動しております!しかしながら、1メートル以内に入りますと同時に、炎は消滅してしまっています!
 こちらが監視カメラが捉えた映像でございます!」

そう言って報告に来た男が手元のリモコンのボタンを押す。部屋にあったモニターに電源が入り、四つの映像が流れ始めた。そこにはわたしが四方から撮られた映像で、確かに先程わたしが体験したものである。


突然此処に来たかと思うと、なにやら火が点いたあらゆる攻撃(ミサイル・ナイフ・エトセトラ)を受けたのだ。だが、奇妙なことにその火はわたしの付近に来ると消えてしまった。動力源を失ったのか、攻撃はそれのおかげで止んだ。足は挫いてしまったが。


その映像が終了すると、報告に来た男は退室してしまった。早い。ぐりんと男らの顔がわたしの方を向く。


「リングがないか調べろ」
「じゃ、王子が」
「思春期の男の子が女の子の身体を触っちゃ駄目よぉ」
「思春期じゃねーし」
「アタシがやるわ」


おかま疑惑男がわたしを見て、口角を吊り上げる。な、何をするのだろうか。おかま疑惑男はわたしの腰を掴み、自分の肩に載せた。所謂俵担ぎだ。


「じゃあちょっと待っててねぇ」
「此処でやっても良いぜ」
「五月蝿いわよベルちゃん!あと、レヴィも早く鼻血拭いておいて」
「げー、汚いですー」
「う、うるさい!」
「妄想すんなよ変態ジジイが」


「さ、行くわよー」


あんな様子を見ていると普通の男らに見えるが、こんなことをされたのだ。普通ではない。おかま疑惑男はわたしを隣室に連れて行き、ベッドに落とした。


mokuji