正十字学園図書館司書より 02
どういうことだ。全く持って理解が出来ない。夢でも見ているのだろうか。
まあ、もうこの際家に帰れるのなら何でも良い。
取り敢えず、先に漫画でも買っておくとするか。そう思って表紙を確かめようと右手を顔の前に持って来た。って、あれ。
漫画が、無い。
私の右手には何も握られて、摘まれておらず、ただ手相が見えるばかりだった。無くしたってことなのだろうか。付近の地面を見てみるが、何も落ちていない。何処に行ったのだろう。
ま、まあいいか。大丈夫。タイトルも覚えているし二巻だったってことも覚えている。本屋に行けば、問題ない。
高鳴る心臓を落ち着かせる為に深呼吸を数回繰り返し、見慣れぬ土地を歩き始めた。目指すは本屋だ。看板を一つ一つ見つめながら、私は震える手を押さえ付けた。
――*――*――
五分ほどして開かれた本のマークを発見した。私は駆け足でそちらに向かう。店名を見れば、なんだ、私の住むアパートの近くにある書店と同じ名前。近くに見覚えのあるアパートを探してみるが、案の定見つからなかった。
少しばかり落胆しながら自動ドアの前に立つ。少々エアコンの効き過ぎる店内に入ると、早速お目当ての少年漫画コーナーに駆け込んだ。
だから、おかしいってば。
確かに見覚えのある漫画のタイトルを何度も見つけた。だけど、どれも何処か変なのだ。少しいじってあったり、内容すら変わっていたり。わけが分からない。
更に私を痛め付けたのは、探していた漫画は発見した。しかし、タイトルが違うのだ。
タイトルに含まれていた色が違う。「金」じゃない、「青」だ。
なのに、どうして。ああもう。わけが分からない!
あ、れ。そう、いえば。
ふと思い当たる節があるような気がした。私は必死に二巻で主人公の弟である少年が持っていた月刊誌を思い返す。
確か、それではこの漫画のタイトルは―――、!
「う、そだ」
そんなこと、信じられない。持っていた求めていた漫画と類似しているそれを落としてしまうが、全く気にならなかった。
神が隠したのは