委員長と悪魔 01


「委員長、また明日」
「うん、じゃあね」


私は此処、正十字学園一年二組のクラス委員長を務めている。そのため、付いた渾名は“委員長”。元々生真面目な性格からか、そういった役を任されることが多かった。それが別に嫌ではなく、寧ろ誇りに感じていた。今回も進んで挙手をし、任命されたのである。





いつも通り教室には一人、残される。みんな部活や塾、寮に行ってしまっている。カーテンをまとめ、施錠を確認し、鍵を職員室へ返却する。いつもの仕事だ。
担任のにこやかな笑みを見送ってから、私は寮へと足を運び始めた。


今日は課題が割りと少ないし、予習復習も大体済ませてあるから、久しぶりにのんびりしようか。同室の子は部活で帰ってくるのは遅いから―――。
そんな風に今日の予定を考えながら、浮かれた足取りで歩く。


―――と、寮までの道に植えてある木の三本目を通過しようとしたときだった。




ど さ り。




「…、え」



目の前に、人が、落ちてきた。



音は大きくなかったから、きっと高いところから落ちたのではない。そう考えると、この木から落ちてきた可能性が高い。
しかし、そうだとしたら何故木に居たのだろうか。足を止めて考える。


容姿を確認してみると、深緑の髪にパーティー帽の様な尖がりがくっついている。地毛なのだろうか。耳が異様に鋭く、全身真っ黒な格好も怪しい。


なんなんだこの人。ていうか、まずは人に連絡しないと。気を失っているのでは。ああ、声を掛けてみないと。


私は蹲り、恐る恐る手を伸ばす。肩を叩こうとした刹那、その人の腕がぐっと伸び、私の手首を捉えた。


「ひっ」


そんな声が喉から漏れる。そして、ゆっくりその人は起き上がった。


「あなたは誰でしょうか、ボクが見えるんですか」


短い眉、気だるげな垂れ目、深く刻まれた隈、やはり異様に鋭い歯。その見たことのない顔に、驚愕を隠せない。
腕を掴まれたまま、その人はこてんと首を傾げた。






未知
(だれですか)


mokuji