I am cold. 03



ポイポイッとゴミを捨てるように追い出される私達。残ったのは同姓の先生と生徒のふたりだけ。同姓だからといってなにもご結婚とかお子さんとかそういうことではないようだ。とりあえず、この件は放置しておく。


先程まで中で起こっていたことについて説明しよう。その同姓の先生と生徒もとい奥村雪男先生とその一生徒が喧嘩をして、誤って悪魔が出現しました。以上。端的に申せばこういうことだ。
何が何だか解らないが内輪でのことらしく、魔障を受けていない生徒のために悪魔である小鬼をおびき寄せようとしたら、その喧嘩で間違って原液を落とし軽く暴走しつつある小鬼・鬼たちが皆仲良くハイキングに来てしまった。危険なので生徒は退室。
奥村くん(と、奥村先生が呼んでいた)も退室を促されたが、ドアを蹴って閉めてしまった。大事な第一回目の授業だってのに、面倒なことを起こすものだ。というか、公私混同しないでほしい。そういうことは家に帰ってやれよ。


「蛍ちゃん、風邪?」


廊下の壁にもたれて咳をしていると、朔子ちゃんが心配そうに私の顔を覗きこんだ。その質問に私は苦笑する。


「うん。私、万年風邪っ引きだから」
「万年?じゃあ、一年中なの?」
「そうなんだよね。花粉症でもなくって、ただの風邪が一年中。冬とか流行る時期はいつもよりひどくなるだけ」
「うわ、辛そう」
「もう慣れたよーん」


さて、内輪もめの最中で丁度良いから私の持病について説明しておく、私の持病はお気づきの通り、「万年風邪」だ。正式な病名は知らない。名前の通り、私は一年中風邪を引いている。こんな春でも花粉症なんかではなく、マスクとティッシュが手放せないような風邪だ。
それゆえ制服にビニール袋を付けたり、のど飴を常備していたりする。基本的に風邪の季節ではないときは咳と鼻水と少しだけ喉の痛みだけで済む。だが、風邪の季節いわゆる冬になると発熱、気だるさなどなどいつもの症状が悪化する。
このときはとてつもなく辛いので、学校を欠席せずにはいられない。皆勤賞をもらったことなどない。
ただ唯一の救いはこの風邪はうつることがない。私ひとりが苦しむだけで、周りのひとに伝染することは今まであったことがない。迷惑がかからないことは有難い。


「それ、悪魔じゃないの?」
「んんー、そうかもしらないけどまだわかんない」
「一年中風邪を引かせる悪魔?」
「そういうやつもいるかもしれないじゃない」
「ちょっと面白い悪魔だね」
「確かに」


あははーなんて笑っていると、ドアが開けられた。奥村先生が出てくる。どうやら事が片付いたようだ。別の教室で授業が開かれるらしい。
奥村くんも出て来てドアは閉められる。それはとても自然な動きだったが、何処か教室の中を見せないようにしている気がした。
しかし、私は偶然にもドアの傍に立っていたために、ちらりと見えてしまった。教室の中はボロボロで、それで、


「…あお、」


至る所に、真っ青な炎がちらついていた。



(あれは一体なに)




mokuji