I am cold. 02



入学式が終わると、普通何をしますか?もちろん親御さん達と帰宅したり、ご飯を食べに行ったり、友達と遊んだり、様々でしょう。しかし、それが出来ないひともいます。
さて、それは誰でしょう。


ピンポーン!正解!そう、このワタクシのようなひとです!


具体的に説明すると、私は入学式後にとある場所へ行くよう指示されているのだ。その場所は「祓魔塾」と呼ばれる塾である。
塾といっても、ただ単純にお勉強をするところではない。少なくとも国語数学英語理科社会などなど、学校でやるようなことはしない。「祓魔」とはすなわち、「エクソシズム」。「祓魔塾」とは「祓魔師養成塾」のことだ。


私がそこに行くのは別に祓魔師になるためではないのだが、両親がその気のため仕方が無く通うのである。ただでさえ持病のことで忙しいのに、祓魔師にもなれなんて面倒な話だ。それでも今まで面倒を見てもらった恩返しという形で祓魔師になることにしている。まあ、保留というものだ。


そんなわけで、私は首にかけていた鍵を取り出した。この鍵、何でも無いように見えて実は普通の鍵ではないんです!ちょっとアンティークな感じがしてとても素敵なこのデザイン、なんだか魔法の鍵のようじゃありませんか?そう!そのとおりなんです!さあ見ていてください!この明らかに鍵穴の違うドア!これにさしてみせましょう!いきますよ…?えいっ、ほら、聴きました?確かに「ガチャッ」といったでしょう?実はこの鍵、本物の魔法の鍵でして、どんな鍵穴にでも差すことが出来ます!更に、見てください!ドアを開けるとそこには校舎ではなく…、なんとあの某魔法学校の如く古い廊下が現れました!此処はかの有名な「祓魔塾」の廊下です!お分かりいただけましたか?この鍵はどんなところからでも祓魔塾に行ける万能な魔法の鍵なんです!今なら祓魔塾に入塾すると貰うことができますよ?ぜひともこの機会にどうぞお手にとってみては?お電話番号はゼロイチニーゼロ…―――。


とか、脳内テレビショッピングをしていると、いつのまにか「一一〇六号室」に着いていた。うっかりうっかり。


派手にドアを開けるような転校生なんかに私はなれないので、とりあえずそっと開けた。軋む音がなんともそれっぽくて、思わず驚く。押し入れるように教室に入れば、既に何名か生徒が座っていた。って、あ。


「ツンデレちゃーん!」
「あ、アンタ!あのときの…!」
「出雲ちゃん、お友だち?」
「と、友だちじゃないわよあんなマスク女!」
「ぬおっ、ま、ますくおんな…」


何度も言われ続けた渾名をまさか高校でも言われるとは。傷付いた。しくしくしながら大人しく空席へと向かう。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ…!」
「へえ…なんすか…ワタクシ傷心なうなのですよ…」
「うっ…、わ、悪かったわね」


あ、謝ってくだすった。流石ツンデレちゃん。いっきにテンションを上げてツンデレちゃんの手を握った。


「私は桂野蛍といいます!ツンデレちゃんお友だちになっていくださいまし!」
「は、はァ?なによ、ツンデレちゃんって…」
「ツンデレちゃん、お名前は?」
「神木出雲…」
「出雲ちゃんですね!ではよろしくね」
「気安く呼ばないで!」
「出雲ちゃんも私のことはどーぞお好きに呼んでください」
「…か、勝手にしてればいいじゃない!」


ツンデレちゃんもとい出雲ちゃんは顔を赤くしながら席に戻って行った。かーわうぃー。まずは友だち第一号!ということだ。これから楽しくなりそう。
ふと、出雲ちゃんの隣にいる子と目が合った。温和そうな子だ。


「ハーイ!私は桂野蛍です!出雲ちゃんのフレンズです!」
「あはは、面白い子だね出雲ちゃん」
「ハイテンションなだけよ、うるさいし」
「取り柄だと思ってね。それで、」
「ふふっ、私は朴朔子。同じく出雲ちゃんの友だちだよ」
「おー!じゃあお友だちのお友だちはお友だちってことで!よろしく、朔子ちゃん」
「うん。よろしくね、蛍ちゃん」


やった!お友達第二号いえーい!朔子ちゃんは笑顔がプリチーでツンデレな出雲ちゃんと上手くバランスのとれていそうな子だった。祓魔塾、これなら楽しくやっていけそうだ。
早速私はふたりの後ろの席を乗っ取った。おっと、喋りすぎて咳が出そう。のど飴舐めておこうっと。


mokuji