かわいいは文化だ [ 6/13 ]

藍場 藤
正十字学園特進科一年生。興味がないので流行には疎い。携帯はスマートフォン。
勝呂 竜士
正十字学園特進科一年生。雑誌を読むので流行には敏感。携帯はガラケー。



「あのー…」
「んん?」

やっと授業が終わったー!と喜んで帰ろうとしていると、誰かに呼びとめられた。
誰だろうかと思ってドアの方を見れば、坊主で赤い眼鏡をかけたわたしと同じくらいの身長の男子生徒が突っ立っていた。このひとが呼んだのか。

「ほい、なんでしょう」
「すんません、坊、やなくて、勝呂竜士くんいらします?」

控えめに微笑しながら京都の方言で喋るその子。ふおおおお、かわいい。
キュート派のわたしの胸に天使の矢が突き刺さった。

「いますよ!呼んで来ましょうか?」
「ほんまですか?じゃあ、頼みます」
「承知のすけ!」

いやん、藤ちゃんこのひとに惚れそう。帰る支度をしている勝呂くんにルンルン気分で膝かっくんをした。決まった。

「っ、何するんか!」
「勝呂くん、何だか空気的に『ちょっとメアド交換してくださああい!』て言いたくなるようなプリチーボーイが呼んでいるよ」
「…誰やそれ」

どうやら伝わらなかったようだ。勝呂くんなら分かってくれると思ったのに。

「坊主に赤いめがねのかわいい子」
「ああ、子猫丸か」

なんだとう?

「こねこまる?子猫丸っていうの?」
「そうやけど…、なんや興味持ったんか」
「ギザかわゆす!」
「ちょお古いわ」

あんなかわいい容姿なのに名前が『子猫丸』なんて、もう女の子の心を鷲掴みして更に潰しそうな勢いじゃないの!

うわあ、仲良くなりたいなあ。

「かわええかわええ言うのはええけど、本人の手前では言わんといてやれ」
「うん?なんで?褒め言葉だよ?」
「本人が気にしとるからや」
「へえ、ならばあいあいさーキャプテン!」

びしっと敬礼を決めると、勝呂くんは「なんやキャプテンて」と言って笑った。おお、今日の勝呂くん機嫌がいい。
いっつもプンスカしているから高血圧なのかと心配していたのに。

「ね、わたしメアド聞いてもいいと思う?」
「メアドくらい減るもんやない」
「だよね!ふわードキドキする!」
「子猫丸に恋でもしたんか?」
「もう類似した感情だと思うよ!」

「…ほうか」
「へ?どうかしたの、勝呂くん」
「別に何でもないわ。早よ行くで」
「あいあいさー!」

スキップしながら子猫丸くんのところに行った。事情を説明すると、子猫丸くんは不思議そうな顔をしながらも携帯を取り出してくれる。
わたしもスマートフォンを見せると、「進んではりますねぇ」って!もうドキドキが止まらない!

今夜からどんどんメールしようっと。


あ、そういえばわたし勝呂くんのメアド知らないや。聞いたら教えてくれるかなあ。



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