Bad to meet you! [ 1/13 ]

藍場 藤
正十字学園特進科一年生。制服の上から半纏を着ている。出身は正十字学園町。

勝呂 竜士
正十字学園特進科一年生。見た目はヤンキーだが性格は真面目。出身は京都。

随分前から気になってはいた。とても目立つゆえに、いつでも視界に入って来た。他のクラスメイトもそうだったらしく、女子は積極的に話しかけ、男子は控えめにそれを盗み聞きしていた。
理由は特にないらしく、一度嫌味な女子が「目立ちたいの?」と尋ねたところ「目立ちたかったら髪の毛を青色にする」と回答していた。変な奴だ。

そんな第一印象を持ったまま、月始めに行われた席替えでその人物と、隣の席になってしまった。

「おおっ、いちばんうしろ」

机を動かしてしまいぼんやりとしていると、ふいに隣からそんな声が聞こえた。大げさに反応したことを軽く後悔する。ぱちり。目が合った。

「こんちはぁ、藍場ですう」
「おっ、おぉ…、勝呂竜士や…」
「よろしくらめーん」

ブイ、と人差し指と中指を突き出す。その女子――もとい藍場は、人懐っこく笑ってみせた。
しかし、変な女子だ。隣の席なったんもええ機会やな。そう思い、俺は思い切って話を切り出すことにした。

「ちょっとええか、」
「んん?なんです」
「藍場さん…、半纏とか着とるけど暑ないんか」

そう、彼女が変な点はただひとつ。制服の上から半纏を着ていることであった。今日は赤色の半纏で、毎日その柄は変化していた。入学して以来、彼女が半纏を脱いでいるところを見たことがない。体育のときは脱いでいるらしいが。
冷暖房完備とはいえ、流石に暑いであろう。俺の質問に藍場さんはしばらくキョトンとし、それからまた笑った。

「うーん、暑くないよー」
「つか、違反やろ普通」
「そぎゃんこと言うたらあんたのそんピアスも御髪も違反やろ!」
「…方言、」
「ほっほっ、わっちの出身地は正十字ですだ」

今度はこちらが面食らう番であった。不意に方言で話し、意味不明なことを言い出す。意味が分からない。
未だ高笑いを続ける藍場さんに、思わず眉を寄せる。

「キャラ迷走しとらんか」
「え、普通だけど」

素直な感想を述べると、藍場さんは首を傾げた。なんでこいつ特進におるんやろ、と疑問を抱く。

「頭、ええんか」
「わかんない」
「まあ、特進におるくらいやしなあ」
「それ、遠まわしに『俺も特進にいるから頭いいのだぜ』って言っていると思うよ」
「嫌味な奴や」
「深読みしてみただけだよう」
「半纏着とるし」
「関係ないじゃーん。半纏着ちゃ駄目とか書いてないよ?」
「常識的に考えたらええやろ」
「じゃあ勝呂くんのそのメッシュもピアスも常識的に考えたほうがいいよ」
「アイデンティティやな」
「ぷっ、鶏っ」
「なんか言うたか?」
「なぁんも言っとらんですう、にわとりゅうじくん」
「何やと!?もっぺん言うてみィ!」
「にわとりゅうじくーん」
「手前、たいがいにせェよ!」

「あ、あのー、勝呂ー、」

音を立てて立ち上がったところで、おずおずと遠慮がちに声をかけられた。そこでやっと気付く。そういえば、今はHRの時間だったような。
隣を見ると、真面目な表情をした藍場が大人しく席に着いている。ちらりとこちらを向いたかと思うと、にたりと笑った。こいつ、俺だけに恥をかかせる気なんか。

「す、すんません!」
「いや、大丈夫だ。でもHR中は静かになー」

くすくすと笑われ、赤面しつつ座る。隣では藍場さんが腹を抱えて笑っていた。くそ、むかつくわ。


藍場さんの第一印象「変な女子」第二印象「むかつく女子」
勝呂くんの第一印象「ヤンキー」第二印象「にわとり」




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