※F/sUBWでギルガメッシュの願いが叶った場合のifストーリー
※抽象的
幾多の命が消え、幾多の魂が解き放たれた。むせ返るように怨念の魂で満ちたこの世に、ひとつの希望の光も見当たらない。ただただ憎悪が蔓延し、悔恨が横行し、死という運命に取り憑かれた霊魂が殺されたがっていた。
その世界に、わたしとおうさまはひとりぼっちだった。
この惨状を望んだはずであるおうさまの表情は、どこか寂しげだった。期待は外れ、願望に裏切られ、結局得たものはひとつもない。そんな末路を辿ったあの男のように虚無を瞳に浮かべていた。
つまらぬ、そう呟くおうさまに、わたしはそうですね、と返す。おうさまはやはりつまらぬ、と繰り返した。わたしはそうですね、とうなづいた。
人間は絶滅した。おめでとう、我々は絶滅危惧種へと昇格した。それを保護するところの人間も、もはや絶滅危惧種なのだ。つまり、絶滅しかけた、そのほうが文言としては正しいのだけれど、結局のところ「人間」はいなくなってしまうのだから絶滅したと言って過言はない。
わたしたちは、せかいになったのだから。
零れ落ちた人類の業に焼かれたこの世界は終わった。方舟を用意する手間もなく、世界は一夜に炎に包まれたのだ。救済とも処罰とも受け取ることのできるこの業火に文句を述べる者も燃えてしまった。讃美を述べる者も朽ちてしまった。世界はきちんと終わったのである。
遺されたわたしたちは、おうさまのせかいになる。それがわたしだけでもかまわない、数えるほどのひとしかいなくてもかまわない、せかいは広くて狭いのだ。ねえ、おうさま。
おうさまは昇る星に目を細めていた。
「我の行いを愚行と罵るか。」
「いいえ、おうさま、あなたが愚行と仰らなければ、わたしはそれを愚行とおもいません。わたしたちはおうさまのせかいなのですから。」
「我の世界、」
「あなたさまだけのせかいです。」
星が弾け、おうさまはようやくやわらかであたたかな笑みをたたえた。光の中におうさまが溶けてゆく。深淵のせかいに光明が灯る。
わたしのせかいが、こわれた。
おうさまとせかい
せかいとはそのひとみにうつるものかそのもののこころかてのうちのものかかみのものかひとのものかだれのものか
(2015/09/03)