XXX got Balsam





さて、何カ月何日何時間何分何秒わめいたか彼女にもさっぱり見当がつかないくらいの頃合いに、この暗闇にひとりの来訪者があった。それはもう奇怪な来訪者であった。
真暗で真黒な空間には似合わない、真白な来訪者であった。
その奇妙な来訪者はくるりくるうりと桃色の傘を回しながら軽快な足取りで闇の中をぐんぐん進んで行く。来訪者の表情は愉しげで、しかし淋しげで。
暗闇の中の存在がひとつからふたつになったことに、彼女は気付くことはなかった。
なぜなら彼女は、いまだわあわあとわめいていたからである。








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