桃色眼のミステリー







「へーい、竜士くん!ハッピーハロウ「ほいあめちゃん」はうっ!」


出落ちである。


ノリノリでやってきたと思ったら、この竜士くん、やりおる。既に何もかもを見越してお菓子を用意していた。おかげでわたしの鼻は真っ赤だ。

「ちょっと!竜士くん!どういうことなの!?」
「どういうこともこういうことも、手前のことやからお菓子もらいに来るのなんて当たり前やろ」
「やだ、竜士くん、わたしのことそこまで…」
「ガキやからな」
「しっつれいな!!この格好を見てもそんなことを言うつもりなの!?」
「さっきから思っとったが何やその格好!?どこで手に入れたんかそんな服!」
「愚問だねミスタスグーロ!志摩さんに決まっているでしょ!」
「またあいつか…!」

ででーん!わたしの貴重なスケベシーン!

セクスィーなポージングを決めながら見せつけるは、なんと桃色ナース服である。ミニスカートである。さらに絶対領域までついているのであーる。

こんなものをセットで持っているなんて、志摩さんは見上げるまでの変態さまだ。わたしでさえここまでは達していない。尊敬します!志摩先輩!

「っつーことは、志摩にも見せたんか」
「うん。志摩さん写真撮ってくれたんだよー、ほら」
「……、データもらったらくらさなあかんな」
「えっ?なんて?」
「なんでもないわ。それより寒ないんかその格好」
「ちょーさっぶいよ!!へっくしん!」
「半纏着とらんといっきに弱るな」
「うへへー、じゃあ、あなた、あっためて?」

ドキューン!

ここで渾身のお誘い台詞!決まったァー!竜士くんのお顔は血まみれのごとく真っ赤だァー!

さらに羞恥を墓地に捨て、腰に抱きついて上目遣いを召喚!

竜士くんは完全に放心している!効果はバツグンだ!

ふふっ、これは勝った…!








しばらく無言だった竜士くんは、突然フフフと気味の悪い笑い声を口元からこぼし始めた。

「ほな、あっためてやらなあかんなあ……?」
「うん?竜士くん?ちょっと笑顔がこわいよ?」
「覚悟は、出来とるんよなあ……?」

どこぞのヤンキーのように両手をバキバキと言わせる竜士くん。


こ、これは、まさか、


「やっ、やめて!竜士くんの変態!お代官さま!SM王子!」
「言われもない悪口たたくな!」
「ナース服プレイが好きなんて、ほんとうに高校生なの?マニアックだよ?どうせ靴下だけは脱がさないで後は全部取っ払う気でしょ?そして決め台詞は『フフフ、俺のお注射を「やめんかこのどスケベ女が!」ナッイアガラ!」

ぴぎー、と泣き声を上げながら竜士くんから離れた。ほんと冗談の通じない人だなあもう。

呆れ顔の竜士くんを見上げていると、とうとう溜息まで吐かれてしまった。

「ほんまそういうことしか考えられんのか手前は…」
「楽しいじゃん!ていうかそういうイベントじゃん!」
「ちがうわアホ」
「だって竜士くんが喜ぶかなって」
「喜ばんし、寒そうやから早よ上着着てほしいわ」
「それもそうだね、竜士くんそのジャンパー貸してよう」
「しゃあないなあ…」

今まで竜士くんが着ていたおかげでジャンパーはほっかほかだ。さすがにこの時季に半袖は辛かったなあ。来年は別な仮装にしようっと。

「俺の部屋で暖まって行き。コーヒーくらいなら出したるわ」
「ココアはないのかね!」
「ほんましゃあない奴やなあ」

苦笑いを浮かべる竜士くんの手に引かれる。いつのまに手をつないだんだろう。

「うへへへ」
「なんや、気持ち悪い」
「やかましいよ!竜士くん!」

今年はいつにもまして、ハッピーハロウィンだなあ!







桃色眼のミステリー

「志摩、」
「怒ってはるんですかぁ?坊のためにと思って用意しとったのに」
「……」
「……ぷっ、なんですかその顔」
「ようやった……」
「今度の試験は頼みますわー」

 

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