03:被害者の正体


「その為、歪みが出来てしまいました。その歪みの証拠が貴女の世界で起きた現象です。その歪みは徐々に修復すると同時に周りを巻き込みました。
その修復時に巻き込まれたのが、貴女です」
「………つまり、歪みの修復に巻き込まれ、私はこのパラレルワールドに来てしまった。そういうこと、なんですか」
「はい。理解が早くて助かります」

なんてことだ。そんなふざけた話があるというのか。
私は此方で起きた事件に巻き込まれたようなものだ。その所為で、わけの分からない所に来てしまい、こんなに危険な状況に置かれているのか。

「しかし、何ら変わりはありません。貴女はパラレルワールドから来たということ以外はただの人間。
 少々若返ってしまいましたが、普段と変わりなく生活を送ってください」

「じゃあ前に居た所と、此処は何が違うんですか」
「ほう、興味がありますか?」

興味があるも何も、何か違うのであればそれに順応しなければならないではないか。知識が無くては対応が出来ない。

「“悪魔”をご存知でしょうか」

顔の前で手を組みながら、フェレスさんは呟くようにそう言った。

「は、あくま、ですか」
「はい」
「知っていますが…、架空上の話でしょう」
「貴女の世界では、そうだったらしいですね」

「えっ、え、まさか」

コクリ。肯定。
ということは、この世界には悪魔が存在するということ…。えええ。

「悪魔は魔障――悪魔から受ける傷や病――を受けると見えるようになります。
…先程、貴女はパラレルワールドから来たということ以外はただの人間と言いましたが、それは嘘です」

嘘って。なんで。私は今、何も変化がないのに。

「貴女は魔障を既に受け、それも厄介な悪魔が憑いています」
「既に魔障が、それだけじゃなくって、憑いているって…?」

嫌な予感がし、動悸が激しくなる。何もない筈なのに、どうして。

「まひるさん、貴女、前の世界のことを思い出せますか?」

「―――――前の、世界のこと、」

復唱する私に、フェレスさんは少しばかり眉を下げた。





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