2015/09/18 14:24 舌切り雀




「嘘つきは閻魔様に舌を抜かれるそうだから、きっと貝木の舌は一枚としてなくなってしまうのでしょうね」


安っぽいブルーハワイによって真っ青に染まった舌に顔を顰めながら青子は呟いた。貝木は呆れて俺の舌は一枚しかない、地獄などくだらないという話をした。いいじゃない、それでも。くだらなくともあるかもしれないのだから。先人の知恵を無駄にするのはとても勿体のないことよ。そのような無用なことを考える女ではなかったな、と心中で失望して手元の粗茶をすする。彼女は天国や地獄といった死後の世界を信じていないはずである。期待にも似た確信であったが、まず間違いあるまい。



2015/09/18 09:30 ピース、ライト


「煙草、吸っていたのね。」
「みんなには内緒にしてくれよ。」


内緒事が大好きなきみならそういうの、得意だろう。口先だけの揶揄に私は息を吐く。その台詞はつい一週間前も聞いたのだけど、もう忘れてしまっているようだ。普段そういうことに気を遣って気を付ける彼も、たまに抜かる。どうやらお疲れだと悟った。労いの言葉をかけて脇に抱えたジャケットをさらった。今日は我儘を控えたほうがいいだろう、余計に疲れてもらっては面倒だ。淹れたての珈琲の感想をいただいて、デスクへと向かう。明日は生憎の天気で、絶好の仕事日和のようだ。これなら件のルートでも上手くやれるだろう。まとめたデータの確認を終えて電源を切る。防弾のケースに包まれたパソコンに彼はご満悦だ。



2015/09/16 14:05 兄と



兄は絵に描いたように賢い男だ。揉め事を率先して持ち込むことはなく、常に規律規範に正しく生きている。家族だけでなく他人とも当たり障りのない、実に有機的な関係を築き、そのおかげで彼の周りには何一つ害をもたらす存在はいなかった。

だからきっと、兄の心のうちに巣食う異常に気付いていたのは、私だけだろう。

彼が家を飛び出すまで、家を飛び出してからも、家族の誰ひとりとして兄の異常に勘付くことはなかった。口を揃えて「きっと何か事情があるのだろう。我儘ひとつ言わなかった子だ。このくらいのこと、気にする必要もない」と定型句のように呟いた。



2015/09/16 14:04 ache


頭の端が痛い。隅がズキズキと痛みを主張するように唸っている。集中力が持たない。夢見心地にも似たやわらかな口調で正解、とだけ告げた。それはあまりの痛さのために一言しか発せないゆえだった。気付かれないように曖昧な笑顔を浮かべて、次の問題を指示する。痛いな、と口の端からこぼれた。彼女には聞こえなかったようだ。



2015/09/16 13:03 test

test
おためし


△△MEKURU