そのメイド、(黒執事)


今宵もまた、奇妙な晩餐会が催される。

一介の女中は主の前に膝をつき、頭を垂れる。

「このはかなきいのち、ぬしさまのために」

今宵もまた、女中の決まり文句が虚しく屋敷に響き渡った。




かのもとへ届くは純白の手紙。ぽつんと光る赤は、あの方の標。彼はそれを見て、まゆをひそめる。嗚呼、またも女王陛下の機嫌を損ねた輩がいるのか。それを毎度処理しなければならないこちらの身にもなってほしいものだ。届くはずのない嘆きは、虚しく彼の胸の内で消えゆく。

かのもの、シエル=ファントムハイヴは深く息を吐きながらその封筒を受け取った。




「連続婦女失踪事件、か」
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