シルノフ編 | ナノ
暗い暗い、光も差さない部屋で女は仰向けに寝転がり天井を見上げる。
彩りのない黒目はたまにまばたきをする以外には、決して動きを見せない。心のない、ただの人形のようにじっと、ぼんやりとした様子で寝ているだけだ。
「私は」
声が漏れた。まるで喘ぐように、呼吸に合わせて吐き出された小さな声は冷えた部屋の中に響く。
「欲しい」
心の奥底からのぞいた欲望の塊に、何を思ったのか女は顔を愉悦に歪める。
「欲しい、欲しい…私っ…あ…っは、はははは!!!!」
高い笑い声が部屋のあちこちに反響して静寂を激しく打ち破る。暗い部屋に似つかわしくないほどの、壊れた笑い声。
それでも女は笑い続けた。
そして不意に立ち上がると、おぼつかない足取りで部屋を出て行った。
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