クルィロフ家編 | ナノ


 双子当主は未だミハイルの執務室にいた。

「で、今エミール様はどちらに?」「現在、我ら一族の異能を継いでいるのは僕ら二人と彼女だけ」



「今はモニカと言いましたか?」「あれが出て行った後、一族の出生率は著しく低下した上に謎の病により一族のほとんどが息絶えました。現在降霊が行える人間は僕らのみ」


「エミール様の異能は何としてでも覚醒させて頂きたい」「エミール様は我らクルィロフ家に返して頂きます」


 双子の言葉を黙って聞いていたミハイルもその発言にだけは黙っていられなかった。

「ふざけないでもらおうか。エミールは私の娘だ。クルィロフ家の娘ではない」

 吐き捨てるように言うと、双子は表情のない顔をミハイルに向けた。

「異能の覚醒がお嫌でしたら」「初代の意向はお守り下さい」

「我らが一度(ひとたび)言霊を紡げば」「異能は覚醒します」




 そう言って双子は三日月を模したように口元を歪めた。








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