クルィロフ家編 | ナノ





 夜中。
 屋敷内もがらんと静まり返り、月だけが煌々と辺りを照らす。
 ミハイルはモニカに宛がわれた部屋を訪れていた。

「―…そう。やはり双子当主は異能を覚醒させるつもりなのね」

 モニカはミハイルから昼間の出来事を聞いていた。
 話し終えたミハイルはモニカの長い黒髪を一房掴み唇まで持って行く。軽く口付けたら、モニカは嫌そうに眉をしかめた。

「また君はそんな顔をする」

「あくまでも私と貴方は共犯者でしょう。甘えたいなら他所でやってちょうだい」

 モニカの言葉にミハイルは負けじと応戦する。

「可愛い娘まで作っておきながら?勿論、愛人だとは思ってないけど、こういうことは許されていると思っているよ」

 そう言って腰を引き寄せようと手を伸ばしたその瞬間、モニカはミハイルの足を踏み付けた。

「不能にされたいの?共犯者さん」

 にっこり。
 極上の微笑みと共にモニカはミハイルに拳を突き付けた。

「ご勘弁を、レディ」

 ミハイルは苦笑した。

「……。クルシェフスキーの復讐は私達の手で終わらせるって約束だけど…」

 モニカがそう言うとミハイルは彼女の腕を掴み、自分の方へと抱き寄せた。モニカは抱き返すわけでもなく、ミハイルの為すがままの状態で彼の返事を待っている。

「心配いらない。君と交わした約束は必ず守るよ」

 ミハイルのその言葉にモニカはようやく彼の抱擁を許し、自らもミハイルの背に腕を回したのだった。










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