番外編 | ナノ
「赤ぎれ、ひどい…」
そう言って俺の手に触れた彼女の体温は酷く低かった。
窓の外は雪景色だが、生憎と外に出たいわけでもないので俺とロザリは室内にいた。
もちろん暖炉付きの。
エミールは多分ウォッカの所。
リキュールは任務。
だだっ広い室内には俺とロザリの二人きり。
そんな状況だ。
勿論、俺の心臓は早鐘が鳴るかのようにバクバク言っている。
「痛く、ない…?」
眉を寄せて心配そうな顔をするロザリ。
「結構痛いんだよなこれがまた。指の関節なんて曲げたくもないけど、それは出来ない話だしなー」
「あ、血が…」
指を曲げてしまったせいだろう。
切れ目から血が滲み出てきた。
服に付いたら面倒なので、近くにあったティッシュを取ろうとした瞬間、…ぺろり。
「あ、駄目。とまらない……」
「おおおお前何してんだーー!!!!!」
(な、舐めやがった!)
「?…とまるかなって、思って…。でも駄目みたい」
「うわわわぁぁぁぁぁ」
何て情けない声を出してるんだ俺。
相手は電波だ油断すんじゃねぇ俺。
「お、お前っ、人の血なんか舐めるな!」
「……ククールだから」
「…は?」
「ククールだから、良いかなって………」
あぁ、もう俺の心臓保ちそうにない。
一応野郎だぞ、俺だってさ。
「ごめん、なさい」
しゅんとするロザリも可愛いななんて、不覚にも思ってしまった自分はきっと末期だ。
だが次の瞬間、ロザリは性懲りもなくとんでもない事を言い出した。
「ずっと舐めてたら、とまるかな…」
反省してないなコイツ。
「だから、何でそうなるんだよー……」
うなだれる俺。
いや、正直血がとまるまであんな事してもらえるんなんて野郎としては大歓迎だけど、そんなの変態過ぎる。
こんな所をウォッカに見られたら一生ネタにされるだろうし、エミールだったら変態だの何だの言われて軽蔑されるだろう。 リキュールに至っては無言のままその場を立ち去るだろう。
「…お前は読書でもしといてくれ」
「? うん」
そうしてくるりとロザリに背を向けるようにして向きを変えた俺は、ロザリに舐められた指に一つ口付けを落とした。
(……………変態)
(ロ、ロザリ!!!!!?)
(蝶の変態って、凄いね…)
(何だよ、そっちか!)
(?)
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