番外編 | ナノ
この状況は何だろうか。
昨日、ある瞬間から意識が途切れて、それから今現在。
目の前には笑顔のウォッカ。
「おはよう、お嬢さん」
おはよう?…………ん?何言って……
ゆっくりと身体を起こす。何だか肩が寒い。
「!?ななな、なんで私っ、こんな格好!?」
見れば今現在自分の纏っているものは薄いブラウス。(何故か肩が露になっている状態であった)
確か昨日はその上にチュニックを着ていたはずだ。
しかもブラウスが薄いせいで色々と透けてしまっている。
下はきちんとロールアップした裾からレースを覗かせたボトムを履いていた。
「言っておきますけどー、俺何にもしてないから」
ウォッカは呑気に言った。
「してたら殴ってるわよ!!あぁもぅ信じらんない。醜態だわ、昨日の私を抹殺してやりたい!」
ウォッカに背を向けるようにしてブラウスのボタンを留め直す。
今気がついたがここはウォッカの執務室のようだ。
「…ウォッカ、私、昨日どんな感じに…?」
恐る恐る聞いてみると、ウォッカは冷たい水の入ったグラスを渡してきた。
黙ってそれを受け取り喉を潤す。………美味しい。
「こんな感じに出来上がっちゃうくらいに酔っ払ってたかな」
「………それでどうして此処に…?」
「そのまま部屋に帰ったら朝起こしに来た使用人にその姿で発見されると思って。つまり、ボスの耳にでも入れば色々面倒だと思わないかい?」
確かに。父の耳にでも入れば、あの子煩悩な父のことだ。しつこい追及が始まるかもしれない。
「……取り敢えず、ありがと。見つからないよう帰る事にする」
「見つかったらお嬢さんの朝帰りスクープになるだろうね、ハハハ」
ウォッカはけらけらと笑っている。
朝から何て厭味な男なのだろうか。
「本当、洒落にならないんだからね…!」
(朝からお元気ですねぇ…)
部屋の隅っこにトゥルがいた事にはエミールは全く気がつかなかったのだった。
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