その人にとって何が大切なのかなんてのはその人にしか分からない。他人にとっては価値の無いものでも、本人にとっては命をなげうつ事も厭わないほどのものかもしれないのだ。それは、そう、彼女にとっての彼のように。
「お似合いですわ、ジェイク様」
にっこりと美しく微笑んだ彼女に彼はにやりと笑った。ぼさぼさの髪もワイルドで素敵だったが、昔と同じ髪型にしたこの姿はさらに素敵だと彼女は思った。長い間会えなかった寂しさも作用して、彼を一層格好良く見せているのかもしれない。ほぅ、と息を吐いた彼女の耳に口を寄せ、彼は甘く囁いた。
「俺と居る時に、他の事考えてんじゃねーよ、クリーム」
耳朶に微かに触れる彼の唇が、熱い。彼女は頬を染めた。
「ジェイク様の事しか、考えておりませんわ」
「嘘吐くなよ」
「いいえ、嘘などではありません。私はいつも、ジェイク様と、ジェイク様に関わる事しか考えておりませんもの」
「はは、愛されてるねぇ、俺様は」
「勿論ですわ」
彼女はまた美しい微笑みを浮かべる。彼が傍に居るなんて、こうして笑い合えるだなんて、嗚呼何と言う幸せか!この気持ちを想いを込め、彼女は恋人の首に手を回した。
「私はジェイク様を、何よりも愛しておりますもの」
「奇遇だな、俺もだぜ」

狐と狸の愛し合い

彼女にとって彼が大切であるように、彼にとっても彼女は大切なのだと言う事は、彼女を抱きしめた腕が語っている。


title by 嘯く若葉

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