「黄色い鳥は空を飛ぶと思うかい?」
キングオブヒーローの口から出て来た謎の言葉に、稲妻カンフーマスターは可愛らしく首を傾げた。
「………え?」
「黄色い鳥は空を飛ぶと思うかいと聞いているんだ」
彼は至極真面目な顔で同じ質問を繰り返す。彼女は身体も思考もフリーズしていたが、暫くしてから目の前の異性が何の意図でそのような質問をしてきたのかを考えた。黄色い鳥は空を飛ぶか。彼女は鳥の種類に詳しくないし、それは彼も同じだろう。ではなぜ質問は白でも黒でもなく黄色なのか。いやそれよりもなぜいきなりこんな質問をしたのだろう。トレーニングをしていた二人が休憩中の手持ち無沙汰に会話をしていたのは認めるが、それは黄色い鳥についての事ではなかった筈だ、いや絶対に違った。
「…黄色い鳥は、空を飛ぶか」
彼女の呟きに彼は頷いた。彼女は悩む。あまり良いとは言えない頭を回転させ悩む。そして打ち出した答えを、自信無さげに語った。
「………飛ぶんじゃないかな、黄色い鳥も」
「どうしてそう思うんだい?」
「だって、鳥だし。それにボク、飛べない鳥は鶏くらいしか知らないし。でもほら、鶏は白いじゃないか」
彼女の言葉に、彼は今度は満足そうに微笑んで頷いた。それを見た彼女は自分の答えが合っていたのだと思い、嬉しそうに表情を緩める。しかし次に彼は微笑んだまま正答を口にした。
「黄色い鳥にも、飛べないものは居るんだ」
「え、そうなの?」
「そうだとも。…君はペットショップを知っているかい?」
彼女は頷く。彼は視線を彼女から窓の外に広がる空へと移し、言った。
「売られている黄色いカナリアは、籠の中から出られない」

黄色いカナリア
を知らない

空は青く高く広がっており、あの場所を飛べるのに飛べないという事は酷く悲しい事なんだろうと彼女は思った。


title by 嘯く若葉

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