企画 | ナノ


 明かりのない暗い部屋の中。深夜、リタは眠っているレイヴンの心臓魔導器の赤い光を見つめていた。
 見る者にとっては、きっとまがまがしくしか映らないであろう肉に食い込むようにして埋め込まれた痛々しい銀に縁取られた真っ赤な核はリタにとって、この上なく美しいものであった。
 今日は仕事で疲れたと言って、帰ってくるなり泥のように眠り始めたレイヴンは気配に聡いくせにリタが何かしていてもあまり目を覚ますことはない。これも信頼関係のなせる技なのであろうと思うと、それは少しくすぐったくも思えてしまう。
 なるべく毎晩行いたい魔導器の点検であるが、レイヴンはそれをめんどくさがる。「リタっちに見られるの恥ずかしいんよねえ」と一度似合わない照れた表情で頬を掻いていたことがあるが、恥より命である。
 レイヴンが寝こけている今がチャンスだとばかりに検査及びメンテナンスをリタは行った直後であった。
 普段はメンテナンスが終われば、レイヴンがさっさと服を着てしまうので、あまりまじまじと見たことはないのだが、リタは心臓魔導器がとても好きであった。
 レイヴンを生かしてくれているものであるというのもあるが、何よりもその存在が好きだったのだ。魔導器を愛するリタであるが、心臓魔導器に対する想いは他の魔導器に対する想いとは比較できないものがある。
 あまり触れたことのない核にリタはレイヴンの様子を伺いながら指先を近づけた。
 ひたり、と指先を赤い核に落とす。
 生ぬるいそれはレイヴンの体温によって暖められたものなのだろう。つるりとした表面をなぞって核の縁をぐるりとなぞるとリタは指先を持ち上げた。
 レイヴンは瞼を閉じたまま動かない。軽いいびきを時たまかくため、そのたびにどきりとするのだが、リタはレイヴンがまだ寝ているということを確信して、そっと背を丸めた。
 レイヴンの隣に足を崩して、ぺたんと座っていたリタは彼の体の横に手をついて、唇を核へと寄せる。
 普段ならこんなことはしないのだが、なぜかこの核がとても愛しく思えて仕方がなかったのだ。
 唇が核に触れるまで、そう時間はかからなかった。
 音もなく触れた唇は堅い核をたどり、やがてリタは小さな舌を出して、ぺろりと核を舐めあげた。
 当然、無機質な核はなんの味もしない。だが、レイヴンの内蔵を一舐めしたような、そんなぞくりとする背徳間が背筋をかけた。
 伏せていた瞳を開き、リタはレイヴンの横についていた腕に力を込めて体を起こす。
 そして、レイヴンの顔を見やった。
 レイヴンは、まだ寝ているらしい。間抜けに開かれた唇に、ふっと笑ってリタはレイヴンのシャツのボタンを止めて元通りにしてやると、自身もレイヴンと同じ布団へと潜った。
 心を満たす満足感に浸りながら目を閉じる。もう二度と出来ないかもしれない行為はリタの脳をしびれさせていた。

top main

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -