03


『この羊は他人には見えないらしい』

 どうしてこんな結論になったのか。自分でも納得できないけれど、そうだとしか思えない。早足で学校に向かう女子高生の後ろを羊がついて歩くなんて、普通の光景じゃない。なのに道ですれ違う人は誰も、見向きもしないだなんて!
 (散歩中の犬に吠えられていたから、私の幻覚ではなさそうだ。むしろ幻であってほしかった)

「ねえ。もしかしてあんた、私にしか見えてないの?」

 一緒にコンビニを出て、並んで待つ赤信号。大きな羊はゆっくりと振り返る。

(あ、緑色の目)

 横長の瞳孔をふいと逸らした羊は、青いランプを見るや規則正しく蹄を鳴らして歩き始める。このまま学校まで行く気なんだろうか。
 別にいいかな、誰にも見えないなら。何かあったら屋上にでも隠しとけばやり過ごせそうな気がするし。いつもの不良に何か言われたら、煙草を吸ってるあんたも校則違反じゃないって言ってやればいいのよ。うん、それがいい。そうしよう。羊も煙草も同罪!


 土下座の練習、しておこうかな。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -