02


 ばかに大きくて邪魔な体を押しのけながら制服に手を通したのが起きてすぐのこと。あんたがそこにいるとよく見えないのよ、と鏡の前で悪態をついたのがさっきの話。全力で髪を洗い直すつもりだったのに、咀嚼された毛先は汚れどころか湿ってすらなくて私は何度も首を傾げた。臭いって聞いたことあるんだけど、気のせいだっけ。
 ああ、なんてツイてない日なんだろう。これで寝坊なんてしてたらきっと最悪だった。その点だけは感謝したい。
 それにしても、みんな酷いんだから。羊を飼うなら飼うってちゃんと教えてくれればいいのに!なんて姉に文句を言ったら「寝ボケてるのよ」と一蹴されてしまった。おまけに「ナマエが野菜を調味料なしで食べたなんて珍しいわね」だなんて。だから、目の前でその羊がモグモグしてるのがそれだってば!
 結局レタスもトマトも余所見をしているうちに全部食べられてしまった。いいや、途中でコンビニに寄って野菜ジュースでも買ってこう。小銭あったかな。

「わっ」

 スニーカーの靴紐を結ぶ耳元でメー、と鳴かれて飛び上がる。

「あんたも学校行きたいの?駄目よ」

 尻尾を振ろうが鳴かれようが、だめなものは……ぐぐ。

「もう、勝手にすればいいじゃない。
 あんたなんかね、先生に捕まってジンギスカンになっちゃえばいいのよ!」

 頭突きを食らった私の視界に銀河が瞬いた。あ、流れ星!






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