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 老婆エンヤほど変わった人間はそういまい。身体的な意味合いもさることながら、特筆すべきは肉の芽要らずの“忠誠心”とやらである。金や名誉を望まずただ寄り添うことだけを望み、主の為なら自分の息子すら戦地に送る。血縁者とは時に残酷な立場にもなり得る。が。それがなんだと言うのか。知ったことではない。血の繋がりなどとるに足りない概念だ。
 しかし、あれだけは。ジョースターの血統だけは目を離すわけにはいかない。あれは決して恐怖に値するものではない。決して“侮ってはならないもの”なのだ。

「このDIOの運命の歯車から、ジョースターを取り除く必要を感じるのだ」

 何の因果か。これまで何度も阻まれてきたのだ。本当に何もかもが行き詰まり、運命というものを信じざるを得なくなる、その前に。綺麗に片付けしまおうではないか。

「お前は本当に変わった老婆だ……
 欲しいものはなんだ?」

 エンヤはとりわけ老いの目立つ口元を、にいい、と上げて笑みをつくった。抜けた歯の隙間から、尊敬と崇拝の念が零れ出る。

「何度も言いましたじゃろう」

 傍にいるのが望みである、と。

「あなたの守護霊はとてつもない力を持っている。あなたの人生を見てみたい……それだけでいいのじゃ、わしは!」

 ヒヒヒ! などと雛型のような笑い声を聞き流して、隅の暗がりへと目をやった。
 そこにはなにもない。






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