ペアリング


『私に?』

 普段よりどこか意気消沈しているようだったナマエの、花束を見せた時の反応ときたら。期待に満ちた眼差しで先のように寄越された問いに頷くと、途端に耳まで赤くして何度も何度もお礼を言い始めるのだ。あー、もう。

「可愛いんだから」
「花京院」

 視線が痛い。「そのだらしねー顔を何とかしろ」などと承太郎は吐き出す紫煙に軽い舌打ちを挟み、小綺麗なソファに沈んでひと息ついてから「気味が悪い」ともう一度僕を貶しにかかった。

「何をそんなに拗ねてるんだい」
「拗ねてねーだろ」
「拗ねてるだろう。
 いいと思ったんだけどなあ、たまには」

 僕や承太郎なら平気だが、ナマエのことだ。友達もいない遠い異国で迎える誕生日は、きっと心細いことだろう。

「こういうことは仲間の僕らしか気付いてあげられないんだから」
「テメーと一緒に祝う必要はねーだろ」
「それってどういう……え、その包み。
 もしかして」

 承太郎はラッピングされた綺麗な小箱を懐に戻してふらりと席を立つ。

「ナマエは部屋だな」
「さっき会ったばかりじゃあないか」
「生憎祝い足りねーモンでな」
「もう、君って奴は――」



 こうして残された僕は、一人ゴソリと制服のポケットを探る。驚いた。まさか承太郎も“個人的なプレゼント”を用意していたなんて。

(困ったな)

 彼女が好きだと言ったあの色で飾る小さな箱。華奢なリボンのラベルに書かれた“ナマエへ”の文字まで手元のこれと瓜二つとは。どうやら。のんびりしてはいられないようだ。

(中身まで同じでなければ良いんだが)




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1127 ユエ様へ/Happy Birthday!






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