ソーダライト
名誉のために言っておくが、私のせいじゃない。言い出しっぺは承太郎と花京院で、私はあくまで止めさせようとした側だ。未成年がお酒に手を出したって、ロクなことにならないって! まあそのー、結局、押しに負けて空けてしまった訳なんですけれども。
だって、ねえ? ここは日本国ではない訳で、つまるところ、今飲まなくていつ飲むんだい。的な。それでもちょっと温まる位でストップした私は賢いと褒められてもいい。
「む」
花京院がのそりと起き上がった。
「ナマエ、承太郎は?」
「ジョースターさんに呼ばれてった」
「……そう」
「水いる?」
「ん」
わあ、なんというか。寄れば寄るほどお酒臭い。一体何本空けたんだ、なんて考えている間にも、花京院はグラスを持ったまま傾いてく。
「おっ、わ、ちょっと!」
慌ててグラスを取り上げ、身体を支える。水は無事だ。
「……」
花京院の目はすっかり据わっていた。気分が悪いのかどうか知らないが、私じゃ手におえないってことは間違いない。
「ほら、花京院。
横になってなよ。承太郎呼んで来るからさ」
「いらない。ナマエだけでいい」
「でも――」
「ナマエはいつもそうだ。承太郎、承太郎って。
……ぼくじゃあ、駄目なのか?」
「なに、言って」
支えていた手を払い除けられ、身体を押さえ込まれる。
「こんなにナマエを、想ってるのに」
短い悲鳴が上がった。私の口から、まるで、自分の声じゃない。服の中に伸ばされた手は、私のそれじゃない。
「ナマエ」
「や、やだ、」
「好きだよ……ナマエ」
囁く唇の距離は限りなく、ゼロ。鼻先が触れる感覚にぎゅっと目を閉じた。
吐息が離れる。
「……?」
耳に吹きかかる規則正しい呼吸。穏やかな寝顔に肩の力が抜けていく。
こんなのエゴだ。
期待なんて、していなかったのに。
今更誰を呼ぶ気にもなれなかった。
(たまたま先に堕ちただけ)