買い叩かれて1コイン


人間の価値はどこで決まるんだろう。外見。性格。能力。意外にセンスだったりするかもしれない。外見だとしたらたいへん悔しいけど正面に座る承太郎が最強だと思う。性格は誰だろう。花京院が優しいし、何となく落ち着いていてイイんじゃないだろうか。
いいなあ2人とも、お値段以上の香り。私には突出するような要素なんてないんだもの。需要なさそう。自慢できることなんてスタンド能力くらいだ。姿とか消せるよ! なーんて。輝いてたのはDIOを倒しに行く道中くらいだと思う。ところでどうして承太郎は私を睨んでるんだろう。

「なーに?」
「こっちの台詞だ」

さっさと書け、と促されても進まないのが『将来の夢』。つくづく思うのだけれども、この書類の空欄は広すぎやしないだろうか。どうせ「特になし」だとか「未定」だとか、そんなそっけない単語の羅列で終わってしまうのに。

「そうだ、傭兵になろう」
「……」

私は至って真面目なのに、承太郎は顔を覆って深い深い溜め息を吐いた。分かってないなあ。こんな素敵な能力があるのに、わざわざ会社員公務員だと書く必要なんてどこにもないじゃない。付いてる箔は最大限に生かすべきだ。
ほら、探せばありそうじゃない? 財団以外にもさ、スタンド使いを集めて活動してるような組織とか。

「スタンド能力を含めれば、こんな私でも300円くらいには」
「ナマエ」
「なんだい――あ痛ッ!!」

チョップ一発いただきました! 今までで一番強くひっぱたかれたんじゃないだろうか。凹んでしまうわ。物理的にも精神的にも。
アーだかうーだか額を押さえて情けなく呻く私の目の前に、硬貨が1枚。

「……何?」
「てめーの価値なんざその程度で十分だ」

承太郎はそう言って席を立ち、教室から出て行ってしまった。取り残された私と、たぶん私の価値。ひゃくえん。安いなあ。これじゃあ凹める厚さもないや。

遠くで花京院が誰かを叱るような声がしたけれど、きっとミョウジナマエ(¥100-)はお呼びじゃない。御縁ができたら顔を出すわね。


(あんなアプローチの仕方があるか!)






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