アンチココロ論


センセーショナルな告白なんてなかった。無言で繰り返す呼吸にあるのは酒気だけで色気なんて欠片もないし、グダグダこんな事を考えられるくらいだから別に瀕死でもない。だからどうして私がポルナレフに抱きしめられているのか、だなんて、とても。こっちが聞きたい。
珍しく宿で同室になったから、差し障りない程度にお酒を飲んで。“恋愛モノ”の定義やらラブ・ロマンスだとか、何だか適当な話をした。何だったか、多分私が発端だ。下らない内容で馬鹿笑いしてたのに、私の一言で急にこんなことになって。

「ナマエ、お前」

酒臭い息で、掠れた声で、きっと素面じゃ絶対見せない表情で。

「なんでそんな事言うんだよ」

ああ、思い出した。やっぱり私のせいだ。

――恋なんて幻よ、あんな脆いもの。

感情の偽物だと言ったんだ。根底にあるのは欲だけで、センセーショナルな告白なんて所詮自己満足の域を出ないのだと、言ったばかりではなかったか。

「……ポルナレフ、苦しい」
「説明しろよ」

腕の力が強くなる。

「その言葉が本当なら、ナマエ。説明してみろよ。聞こえるだろ?」

胸板に頬を押し付けられる。アルコールをたっぷり含んだ肺の空気が逃げ出して、空っぽになった身体が高鳴る心臓の音で満たされて、

「……ナマエ」
「変なこと、言わないでよ」

私と彼とを隔てるシャツを、くしゃりと握る。ああ、邪魔だなあ。これがあるから触れられない。皺が出来てしまえばいい。

「自分だけが特別、みたいな言い方して。私と同じ速さじゃないの」

こんなの普通よ、と呟いて、行き場のない両手を大きな背中に回した。


(認めるのが怖いだけ)






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -