甲板でマリモと話してから何日か経った夜、ハルさんがまた、ミルクティーを飲みに来た。無自覚なのか無警戒なのか知らねェが、俺はもう決めていた。次に彼女がキッチンに来たら、紳士で優しいサンジくん、なんて、彼女の中から跡形もなく消してやるって。俺は男だ。そして俺は、海賊だ。

「……俺を見縊ってねェ?ハルさん」

 言って、いつも座る椅子をひいたハルさんに近付いていく。普段なら、頼まれて直ぐにミルクを温め出す俺のその動きは、彼女には予想外だったのだろう。ハルさんが少し驚いたような顔をして此方を見る。

「見縊る?…どういう意味?」
「…なァ、はぐらかすなよ」

 逃がさない、という意志を視線に込めて彼女を見つめる。ハルさんの瞳が僅かに揺れたのを見て、ぞくりと背筋が疼いた。彼女が動揺している。俺が今、彼女の心を乱している。
 俺が近付く度にじわじわと後退っていた彼女の背中が、漸く壁に触れる。あとは俺が何歩か前へ進むだけで、二人の距離はいとも簡単に縮まった。

「…ハルさん、」
「っや、…ちょっ…」

 素早く脚を絡めて、ハルさんの顎を持ち上げる。ここまで近付いてしまえば派手な攻撃も出来ないはずだと距離を縮めたが、案の定彼女はただ身を捩ることしか出来ないようだった。
 戦闘における彼女は確かに強いが、単純な力比べなら体格に勝る此方が負けることはない。見下ろしたハルさんの瞳には困惑の色が滲み、そして確かに、俺だけが映っていた。

「………嫌なら、本気で抵抗して」
じゃないと俺、…止まんねえよ?

 囁くようにそう言ってから、ゆっくりと顔を近付ける。ハルさんはふいと顔を逸らしただけで、それ以上のことは何もしなかった。―――ねえ、ハルさん。そんな抵抗じゃあ、ダメだよ。
 避けられた顔をそのまま固定し、迎えに行くように唇を合わせる。何かしら抗議しようと開けられた口には遠慮なく舌を入れさせてもらった。

「…ふ…っ、ん、…」
「っ……は…、」

 ハルさんが、絡めた脚をどうにか外そうと動いているのが分かる。だが残念ながらそんなのは、脚が触れ合っているのが余計に際立つだけで、意味がないどころか余計に俺を煽るだけなんだよ。

Love is tyrant sparing none.
20120203
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