貴方の身体を今、喘がせているのは僕なのに。嬌声の合間合間に彼女がふと意識をどこかへやっているような気がして、僕はいつも泣きたくなる。いや、泣きたいのとは少し違うかもしれない、ただ、胸の奥が咽ぶように痛む。

「……何を考えているんです、」
「っ…、バーナビーの、ことだよ」

 これが独占欲というものなのだとしたら、随分と厄介なものだと思う。僕は貴方が好きなだけで、愛しているだけで、それに付随するそんな汚い感情なんか欲しくないのに。
 一つになれたという悦びなんて、次の瞬間には失うことへの恐怖にしかならなくて、僕の感じる貴方の気持ちが本物なのか不安になって、ねえ、どうすればいいんですか?

「…本当に?」

 下半身は紛れもなく繋がっている、けれど僕には貴方の心を繋ぎとめていられる自信も確信もない。努力とかそんな理性的なものでどうなるものでもない感情を、僕は持て余すしかなかった。

「うん、…綺麗な身体だなあって」

 どうして?貴方は僕が何をしたって変わらない。変えられない。きれいなままの貴方を、どうにもできない。僕は貴方のせいで、こんなに、こんなにも変わってしまったのに。内側の奥深くから、変質させられてしまったのに。
 何を捨てても強くあらなければならなかった僕の、沈み込ませていたはずの弱さを、貴方は引きずり出してしまった。その責任を、取ってくれますか。

「……、じゃあ、」
「ぇ…っあ…っ、!…」

 自身の幼稚な癇癪に、苛立ち混じりで腰を穿てば、膝が胸につくほどに抱え上げたなまえの脚がびくんびくんと空を蹴る。ぴり、と背中に走ったその痛みさえ、彼女に与えられたものだと思うと興奮の材料にしかならなかった。
 そうやって強引に彼女を奪ったまま、僕は彼女の身体にしっかりと自分を刻み付けて、耳元に唇を寄せながら懇願する。

「ねえ、じゃあずっと、…僕のことだけ考えていて…?」

 彼女の愛を疑うわけじゃない、拭えない不安も苛立ちも、全て僕の脆弱さに起因するんだという自覚はあった。自分が愛されるに足るという自信が、どこを探しても見つからないのだ。

「ん、ァっ…、バーナビー……っ」

 それでも、甘い痺れを齎しながらずぶずぶと深まる繋がりと、それに喘ぐ彼女は少しだけ僕を安心させるから、結局は彼女に溺れるしかないんだ。

翼一つじゃ飛べない
20111107

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -