「…っ…バニー、ちゃん…?」

 長々しいキスの合間、息も絶え絶えのクセにそんなふうに愛称のまま僕を呼ぶのは、彼女が未だ余裕を崩していない証拠だ。その事実がどうにも悔しくて、僕は彼女の言葉を遮るように再びピンク色の唇を塞いだ。

「…どうし、っん…ぅ、」

 狭い玄関だった。僕を招き入れたなまえさんをそのまま壁に抑えつけて、キスをした。いつもと違う荒々しさに彼女は少し戸惑っているようだけど、だって仕方がない、こんな風に貴方に触れるのは二週間ぶりなんだから。
 いつだって本当は優しくできる余裕なんてなくて、あるのはただ年上の彼女への意地とかプライドとか、所詮はそんなものだけで、僕は無理矢理に余裕ぶった態度を作り出していたのだけど、今日こそはそれすら取り繕うことができない。

「は…っ、何、…発情期?」
「…その通りです」

 だから今日はもう、いっそ全てをかなぐり捨てるつもりだった。必死で余裕を装ったところで、どうせ彼女の本物のそれには適わないから、いっそ僕の欲の全てを思い知らせてやろうと思った。
 まして今日は二人で過ごせる久しぶりの夜。そもそも余裕を繕うこともできない、我慢、できるはずもない。

「…ちょ、ここ玄関…っ」
「…だから何か?」

 ボタンを外すのも億劫で、シャツの下から滑り込ませた手で下着を無理やりたくし上げる。同時に彼女の足を膝で割れば、密着した腰に自分の状態を思い知った。それすら彼女を煽るように押し付けて、そのまま首筋に噛みついて。

「っァ…、…」

 痛みになのか快感になのか、背骨を反らせたなまえさんに僕はほんの少しの満足を得る。そのまま膝で彼女の足の奥を刺激すればなまえさんの顔が段々と溶けていった。
 いつもよりセクシーに見えるのは僕の錯覚だろうか。いや、もしかして本当に、僕の性急さに興奮してくれているのかも。それとも、久しぶりに感じる僕が彼女も待ち遠しかったとか?

「、いつもより感じてます?…嬉しいな」
「っ…、ばか、ぁ」
「なまえさんは、こういう方が感じるんだ」

 否定しない彼女に、欲望と嬉しさを隠しもしない声で耳を愛撫。もちろん彼女が僕の声に弱いことは承知済み。なまえさんが首をすくめて身体を震わせるのは、かなり感じている証拠だ。
 とろんとした瞳に僕を映した彼女が強請るように僕の首に手を回して、耳元に感じるのは欲に濡れた熱い声。

「ん…は、ぁ…バーナビー…っ」

 ああもう、どうして。どうして僕はこんなにも圧倒的に、彼女にばかり心を奪われてしまうのだろう。名前を呼ばれた、たったそれだけでイきそうになったなんて、誰にも言えやしないじゃないか。

耽溺する青に降伏
20111031

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