俺は何もしていない。強いて言えば、彼女の好きそうな甘めの酎ハイを冷蔵庫に並べておいただけ。そう、あくまで俺は何もしなかった。彼女が明らかに飲み過ぎているのを知っていて、止めなかったんだ。

「ふ、ぅ…んっ」
「、そーそー、っ…うまいな、なまえ…」

 俺の下半身を丁寧に愛撫していくなまえは、目蓋の裏に描いていたよりずっと拙い手つきのクセに、想像以上のその破壊力で俺を簡単に追い詰める。
 銜えて首を振ることを知らないのか、彼女は裏の方を熱心に舐め、先端を押し潰すように吸い付く。今度からは色々教え込んでやろう、などと邪なことを考えながら、彼女の髪に差し込んだ手の平には自然と力が入って、ぐしゃりと柔らかなそれを掻き毟った。

「はァ…っ、こてつ、さ…」

 こりゃ、堪んねえなあ。本物はこんなふうに俺を呼ぶのか。彼女の濡れた唇から洩れる吐息だけで腰が疼く、ぺろりと先端を舐められればもうそれだけでイっちまいそうだ。

「っく……は、ぁ」
「ん、…出しても、いいよ…?」

 あーあ畜生、男を銜えるのなんて初めてのクセに、そんな無闇に俺を煽るなよ。
 俺はなまえが思っているほどお優しい人間じゃねえんだ。そんな挑発的なことを言って、酷くされても文句は言えねえんだぜ。そんな台詞が脳裏を掠める、けれど俺はそれを無視して、もういいからと掠れた声を出しながら彼女の小さな頭を撫でた。

「…さんきゅ、…でも、さ…」
やっぱ俺、なまえんナカでイきてえな…。

 本来の浅ましい自分を押し隠したそんな俺を、彼女はきっとまた、お優しい人間だと思うのだろう。俺が仕組んだと分からないよう彼女を酔わせて、こうなるように仕向けたことも、俺がいつも頭の中で、その口にも顔にも身体にも 好きなだけぶちまけていることだって知らずに。
 俺はただ臆病なだけなのだ。こんなふうに思う自分を、彼女に知られたくないだけ。せめて彼女の意識の中では、優しい男でいたいだけ。そんな卑怯なやつだと知ったら、彼女は何と言うだろう。

「ァ…っ…ん…」
「はは、触ってねェのにトロトロだな」
…俺の舐めて、感じた?

 無抵抗の彼女の身体を優しく引き離し、両手で引き寄せるようにして膝立ちで俺を跨がせる。なまえの下着の中に滑り込ませた指は面白いくらいすぐに濡れた。もちろん彼女の羞恥を煽る言葉も忘れない。
 がくがくと震える彼女の腰を片腕で支え、焦らすように指先の往復を繰り返せば、彼女が喘ぎながら俺を見る。

「…っも、…いい、から…っ」

 早く、と。息を途切れさせながら弱々しく腕を彷徨わせ、俺に縋りついてくるなまえ。素面とはかけ離れたその痴態にも、俺は欲情するばかりで少しの罪悪感すら覚えなかった。
 なあ、俺だって、自分がそんな人間だったなんて知らなかったよ

心臓が灼けていく
20111026

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