彼女はまさしく純粋というに相応しく、例えば私がどろどろに彼女を汚したところで、その透明を濁すことはできない。彼女に触れるたびにその確信が深まり、私は安堵した。

「……ああ、顔にもついてしまったね」

 どぷりと外に吐き出した白濁が彼女の頬に飛んで付着している。指先でそれを拭って口元に持って行ってやれば、彼女はそれをそろりと舐めとった。
 舌の感触がやけにリアルで、あの透明が自分の白濁を体内に取り込んだのだという倒錯的な快感が背筋を駆ける。欲を吐き出したばかりの下半身が、再びじわりと熱を帯びる。我ながら俗物的な身体だ。

「……まっずい」

 うえ、と顔をしかめる彼女の、その白い肢体に、同じく白い欲がかかった様はひどく艶めかしかった。けれどそれでも、彼女自身は不思議なほどに美しさを失わない。
 これほどの性の匂いに塗れながら、彼女だけは一人浮かび上がるようにしてそこに居た。神聖で、不可侵。これはある種の信仰に近かった。

「…いい眺めだ」
「……ユーリってもしかしてそういう趣味?」

 そう問われると、違うとは言い切れない気さえした。彼女のこの痴態は芸術的だと思えるし、神聖を穢し不可侵を侵そうとする自分の行為がいかにも背徳的で、確かに興奮も覚えるからだ。…自分にそんな性癖があったとは自覚していなかった。
 私は彼女を決して汚すことのできないものだと固く信じていながら、届かないはずの彼女をこの手で汚し、地の底まで堕としてみたいと強く渇望していたのだ。それは、正しさなど何処にもない、歪みきった欲望だった。

「…だったら、どうする?」
「んー…ユーリなら、まあ、いいかな」

 昏い気持ちで問うた私に、私の髪を弄びながらさも当然のように答えるなまえ。そうやっていつも彼女は、まるで超能力のように、私自身ですら無意識の願望を掬いとっては叶えていく。
 その度に思わずにはいられない。どうして君のような人間が、この世界に存在し、私の傍にいてくれるのだろう、と。問わずにはいられない。

「……なぜ?」
「うーん……愛、ってやつ?」

 眉を少し下げ頬を染めて笑うなまえに、肺の下から込み上げた何かが鼻の奥をつんと湿らせる。その感情の正体が分からないほど、私は愚かではない。
 けれど同時に私は、それを涙として流せるほどの傲慢でもなかった。

赦されない気がしてた
20111001

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -