意識を失っているなまえの滑らかな背中を、後ろから覆い被さるように眺めていた。
先程三度は欲を吐き出したはずなのに、その行為に疲れて眠るなまえを見ているだけでちりちりと心臓が灼けつくのを感じる。元来そういったことに興味が薄かった自分が、こうまでもこの肢体に煽られるなんて、我ながら滑稽としか言いようがない。
「………なまえ…」
肩甲骨や背骨による凹凸が作り出す卑猥な陰影。そっと指先で触れるとなまえがぴくりと身をよじった。形を変えた影を楽しみながら、骨をなぞるように指を這わせる。吸い付くような、陶器のようなこの肌触りには中毒性すらあるんじゃないだろうか。
先程までは火傷しそうに熱かった彼女の肌が、今は少し冷たい。自分がその熱を与えたのだと思うとどうにも身体の芯が昂ぶった。
「……ん…、」
背骨の窪みをなぞったところで微かに眉を顰めて吐息を漏らしたなまえに、私の心臓はやはりちりちりと痛むのだった。
腹の奥で生まれた衝動のまま、晒け出された首筋にじっくりと時間をかけて噛みつけば、その痛みにうっすらと意識を取り戻したらしい彼女が身体を一瞬だけ強ばらせた。
「…っ、……ユーリ、…?」
状況の把握が追いつかないなまえが狼狽えているのを微笑ましく思いながら、噛みついた場所を今度は出来うる限り優しく舐めてやる。赤紫色に鬱血した噛み痕は暫くの間消えないだろう。そう思うと仄暗い満足感が胸のうちを満たした。
「……相変わらず感じやすい身体だ」
太腿を撫で、その奥に指を滑り込ませると未だ快楽の残滓の残る彼女はすぐに鼻にかかったような甘ったるい声を出し始めた。彼女には何の自覚もないのだろうが、この声にも、とんでもない中毒性がある。
「っ…や、」
「…嫌?…本当に?」
耳の裏を舌で愛撫すれば無意識に足を擦り合わせるなまえ。指先で秘部を引っ掻きながら、ワザと昂ぶった熱を彼女の脚に押し当てると、彼女は魚のようにびくりと身体を跳ねさせた。
問いかけの答えなどわかりきっていた。彼女が私を嫌がったことなど今まで一度もなかったからだ。
「…、ユーリぃっ……」
そう、そしてだからこそ私は、いつまでも彼女を手放すことができないでいる。私が彼女の自由を奪っているのではない、彼女が 私の自由を奪っているのだ。
愛を溶かした息を殺す
20110927