うつ伏せのなまえは上半身をぺたりとシーツに押しつけながら、俺と繋がる腰だけを強請るように突き出していた。
 後ろからのセックスはどうしても動物的で、その痴態だけでもかなり下半身にクるってのに、彼女は枕に埋まった顔から潤んだ視線だけを俺に向けてくるから、本当、それだけで堪らない気持ちになってくる。

「やらしーなあ、なまえちゃん」
「やらし、こと…っしてんの、そっち…っあ」

 そんな強がりを吐きながらも、なまえは無意識に細い腰を揺らしていた。この可愛い女をどうしてやろうかと思案するだけでごくりと喉が鳴る。どうしてこうも彼女は俺の嗜虐心を擽るのだろうか。

「でもなまえ、腰、揺れてっけど」
「ん…知らなっ…」
「ここもぐずぐずだし?」
「……っあ…ァ、ふ」

 ざらざらとした内壁をリズム良く擦り上げると彼女の背中が艶めかしくしなる。なまえは既にぐしゃぐしゃのシーツを震える手で掴んでいて、俺はその上からそっと手を重ねた。自分の腕と並ぶとなまえの腕は一層細く、儚げに見える。
 俺の下でしなる身体もやはり俺のものとは明らかに違っていて、なまえの肌はどこもかしこも陶器のように白く、そして滑らかだった。そのあまりの麗しさに俺はこくりと唾を飲み、肩甲骨の窪みから首筋までを衝動的に舐め上げた。

「…っ…ひあっ…!」

 途端にナカがひくりと締まってどろどろに溶け出すから、こっちは堪ったもんじゃない。快楽へと真っ直ぐに導いていくその感触に奥歯を噛み締め、押し寄せる吐精感を必死で抑えつけた。

「ちょ…っなまえ、く」
「…は、ァ…銀、さ」

 高鳴る心臓とそれに連動する下半身を一先ず鎮めてから、ふとなまえを見る。なまえの表情は先程よりも一段と溶け切っていた。水分を溜めた瞳に映る自分の顔には余裕の欠片も見つからない。当然だ、こんななまえを前にして余裕などあるものか。
 湿った声で拙く呼ばれる俺の名前は自分のものじゃないみたいに甘ったるくて、耳殻から染み込むその音は鼓膜から脳を痺れさせていった。

「…なまえって、背中性感帯なワケ?」
はは、…いーいこと知っちゃったなあ銀さん。

 濡れた視線に耐えられないのをそう茶化しながら、もう一度彼女の背中に唇を寄せる。キスマークでも付けてやろうと少し強めに吸い付けば、逃れるように華奢な背中が仰け反った。
 白すぎる肌にぽつんと浮かぶピンクの痕はあまりにもイヤらしく、自分の付けたものだと思うと余計に気分が昂まっていく。男の身体ってのは本当に、呆れるほど単純に出来ているものなのだ。

「ふ…っ、ァ、や…も、」
「…いい声出しちゃって、」

 痕の上をぴちゃりと舐めると声が一際高く上がって、ナカに埋めた熱は何の遠慮もなく締めつけられて。
 絡みついてくる粘膜が下半身に直接与えてくる耐え難い刺激。身体の奥底からわき上がってくる欲望に抗うことなく、ずっ、と勢い良く奥を突けば、びくびくと痙攣する白い身体。淫靡にしなるそれは、ただただ綺麗としか言いようがなかった。

どうぞ透明な輪郭を
20110707

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「見えない臓器の名前は」
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