ユーリのセックスは異常と言えば異常と言えるのかも知れない。神聖な儀式のような前戯は彼ならではだと思う。いや、彼にとってこれは本当に儀式であって、前戯などではないのかもしれないけど。

「…ユーリ、…まだ…?」

 彼は私の全てを確かめるように、私が纏っていたものの一切を剥いでいた。行為の前はいつもこうだ。かっちりと着込まれたスーツ姿のユーリに、私は真っ裸を晒すしかない。
 そうして、彼は私の身体をとっくりと眺める。あの静かに燃えるような瞳に余すことなく見つめられる私の身体は、もうそれだけで濡れるようになってしまった。それを恥ずかしいと思うのに、拒むことはできない。できないように、彼に身体を作り替えられてしまった。

「…ユーリぃ、…」
「……もう我慢が出来ない?」
「…っ、…うん…」

 彼は私を見るのに満足した後、まるで壊れ物に触るかのように優しく身体のラインを確かめる。それがどうしようもなくもどかしい。
 ユーリの触り方はうっとりと幸せに浸るには優し過ぎて、その先の快楽を知る私には拷問でもあるのだ。だからいつも私はその優しい責め苦に耐え切れなくなって、こうして彼の慈悲を強請る。

「……、最近の君は堪え性がないな」
「…だってユーリが…っぁ」

 すると、呆れた微笑を浮かべたユーリがやっと、私の下肢に触れてくれるのだ。
 一度も触れられていないにも関わらず、ぬるりとした感触がはしるそこは既に自覚できるほど蕩けていて、頬が羞恥に熱くなった。恥ずかしい。でも、気持ちいい。

「…私のせいだとでも?」
「ぁ……っ…ん、」

 待ち望んだ刺激に痺れる全身。揺らぐ思考。返事の声も満足に出せず、首を縦に振るとぞくりとするような月の瞳が細められて、ユーリが口の端を歪めた。私はこの顔が好きだなあと思う。

「なるほど…なまえは、私が欲しくてここをこんなにしているんだね」

 耳殻を舐められるのと同時にねっとりと聴覚を浸食する極上のアルト。反射的に首をすくめれば許さないとでもいうように首筋に吸い付かれた。
 そのまま鎖骨にキスマークを残す彼の指先は依然決定的な刺激を与えることなく、ただ私の性器の形を確かめるようになぞっていた。ぬるぬると滑るせいでより微弱になる快感がじくじくと私を追い詰めていく。

「っ…、あ…、」

 熱く濡れた声が漏れる。唐突につぷりと侵入してきたユーリの長い指に、私はようやく一度目の絶頂を迎える。

侵されざる領域
20110921

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -