ここ何年か、妄想と淫蕩を繰り返すうちに、俺はついに現実を汚した。現実の、穢れない綺麗な彼女をこの手で汚す感覚は凄まじい快感を伴った。

「ん、サンジく、っ…」

 頭の中で彼女を犯したことは何度もあった。一人の時もあったし、似たような女の子を抱きながら目蓋の裏には彼女を映していたこともあった。それでも、現実のなまえちゃんに触れるのはこれが初めてだった。
 ずっと優しさだけを見せて、優しいだけの指先で触れてきた彼女に、初めて晒すこの、純粋なまでの欲。彼女の眼にはどう映っているのだろう。

「っなまえ、ちゃん、…」

 どろどろになった底無しの悦楽を動物のように貪っているくせに、どこまで行っても欲望が止まらない。止められない。
 酷なほど何度も突き上げた彼女の身体は、いつまでも熱く柔らかく俺の黒い欲望を包み続けた。その感触が堪らなくて、俺の熱は何度欲を吐き出したか知れないのに、一向に冷める気配がない。

「、ァ、あ…っ」
「……なまえちゃん、」

 彼女に一度でも触れてしまえば、俺の頭が過去に作り上げた淫らな虚像全てが、如何に下らないものであったか思い知るほかなかった。
 想像の何十倍も甘い、無意識に男を誘う声。切なげに歪められた顔。快楽に震える爪先。吸い付くように滑らかな肌。柔らかく、そして熱く濡れた女の部分。それら全てを征服しているという事実と高揚。

「っサンジくん、…好き…、っすき…」

 何もかもが想像を絶する美しさで、艶めかしさで、俺のチンケな脳で無理矢理満足させていた下半身にはあまりに毒だ。途切れ途切れの告白、そうやって名前を呼ばれる度に煽られる、俺の中の欲望さえ予想以上。

 存分に溶かした彼女の粘膜を擦りあげて、引っ掻けるようにして抜いては狭い奥を押し広げて、絡んでくる彼女の内側に俺の味を染み込ませてやりたかった。彼女の爪に力が入る、首の下に感じるぴりぴりとした痛みさえも最早甘い刺激となって熱を加速させた。
 きみが何より大切で愛おしいんだ、なんて愛の台詞を吐く資格が悉く砕け散る、でも、それでも。

「俺も、好きだよ…なまえちゃん」

 どうしたってこの欲望の矛先にはきみしかいなくて、そんな陳腐な愛を囁く度にきみが幸せそうに笑ってくれるなら、これが俺にとっての愛なんだ。

声を枯らした純潔へ
20111005

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