喉がおかしい。私の声じゃないような、はしたなく掠れた声が耳にこびりつく。ああ、この絶頂は一体何度目なんだろう。
 的確に与えられる下半身の刺激のせいで視界は滲み、全ての許容範囲を軽く超えていた。意識は濁流に呑まれたかのように曖昧で不明瞭なのに、快感だけがクリアに脳内を焦がしていく。

「っ…サ、じっ…く、」
「…うん?」

 私の身体の主導権はもはや彼のもので、私はもう思う通りに声を出すことすらできない。ただただ大きすぎる快楽に翻弄されて、おかしくなっていくだけだった。

「おねが…っ、も、や」
「ああごめん、もっと、だよね?」

 白々しく私の懇願を踏みにじっていくその姿は普段の紳士ぶりからは想像できないほど横暴なのに、それでいて彼は根底の優しさだけは失わないからずるいと思う。
 彼はいつも、本当につらくなる一歩手前で見計らったように行為をやめてくれるのだから。快楽に突き落とすのも、そこから私を救い出すのも彼で、結局最後は彼の優しさに縋るほかないのだ。

「ちが、…ァ…っ」

 何度かナカに吐き出された白濁が、彼が腰を揺らす度にぐちゅぐちゅと音をたて、腿を伝う。部屋には性の匂いが満ちていて、シーツも、身体も、頭も すべてがぐちゃぐちゃだった。
 腿の濡れた感触にも鼻をつく匂いにも過敏に反応してしまうのはやっぱり、彼に仕込まれたイヤらしい身体だからだろうか。恥ずかしい。恥ずかしいのに、感じてしまう。

「…んな締め付けられたら俺、…飛んじまいそー、」
「ひう…っ、あ…」
「ははっ、その声…すっげ、イイ」

 ぐい、と脚を持ち上げられて深くなる繋がりに喉がまた引きつった音をだした。子宮どころか内臓まで押し上げられる鈍い痛みが息苦しい。首筋をねっとりと舐められながら、脳に直接響く卑猥な言葉の意味を理解する度、粘膜が従順にサンジくんを締め付けていた。
 彼の興奮を感じさせる荒い息遣いもまた、連鎖するように私の興奮を煽る。こんなふうに本能を丸出しにした獣のような彼を、きっと私だけが知っているのだと自惚れたかった。

「ァ…、ん…あっ、」
「…あんなにあげたのに、まだ俺のことが欲しいなんて、ほんと、かわいい…」

 ぺろりと舌で唇を舐めるサンジくんはどうしてこんなに卑猥なんだろう。意地悪そうに笑いながら舌を覗かせるそのサマに、彼も所詮はただの雄なんだと 背筋が、震えた。

無味無臭の毒薬でしょう
20110813

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