なまえの指を口に含んで、一本一本丁寧に水分を纏わせる。少ししょっぱいような、苦いような、それでいて甘いような独特の味に少なからず僕は興奮していた。
 加えて言えば、舐め終えた彼女の指先は僕の唾液でてらてらと光を反射していてかなり刺激的だし、切なげに眉根を寄せて、潤んだ眼で僕を見る彼女の表情もなかなかだ。

「王子…っ?」
「うん?」

 なまえのもっとイヤらしい、はしたない顔が見たい、なんていうちょっとした悪戯心みたいなものが、僕の行為をエスカレートさせていた。
 指の付け根から舌を這わせ、指先を少し強めに吸ってやると彼女は悩まし気な吐息を漏らす。恥ずかしそうに伏せられた睫毛は小さく震え、僕を呼ぶ声も心なしか弱々しい。
 ああ、だめだよそんな顔をしちゃあ───もっともっと、虐めてやりたくなってしまう。

「それ、…も、やだ…」
「…そう?…すごく気持ち良さそうに見えるけど」
「っ……」

 わざとらしく笑みを返すと潤んだ瞳が羞恥に揺れた。そんな切なそうな顔で、期待していることを押し隠そうとしたって無駄なのに。上気した頬も微かに開いた口も、僕を求めているようにしか見えない。

「…次は、足もいってみようか」
「や、…もう、…っん」

 微弱な力で抵抗する足を押さえ込み、するりと足首を掴んで親指に舌を這わせる。綺麗に手入れされたピンク色の爪や、吸い付くような滑らかな肌がどうしようもなく女を感じさせて、微かに甘い味さえする気がした。
 強張った爪先をあやすように咥えた指を甘噛みすると、んっ、とくぐもった甘い声。びくんと過剰に跳ねた身体がどうにも加虐心を煽る。

「…感じてる?」
「だって…っ」

 足の指を存分に舐めて、踝、脛、膝、と徐々に場所をずらしていく。身体のラインをなぞるように舌を滑らせ、腿の内側を奥へと辿っていくと、不意に舌先でなまえの味を感じた。
 まだ触れてさえいないというのに、目の前に見える下着はぐっしょりと肌が透けるほどに湿っていた。鼻を掠める性の匂いに下腹部がぞくりと熱くなる。そろそろスラックスが窮屈だ。

「ふふ…、すごい、濡れてるね」
「ぁ…ん、王子ィ、」
「、?なまえ?」

 本来の役目を果たさないほどに濡れた下着をどければとろりと透明の糸がひく。その溢れる蜜に舌を入れようと顔を近づけたところで、なまえが僕の髪に震える手を差し入れてきた。
 促されるままに顔をあげれば物欲しそうに口をはくはくと動かすなまえがいて、

「…も、いいから…っ」

 そんな蕩けた顔で腰をゆらゆらと動かすなまえの、普段なら有り得ないような可愛いおねだりを 聞き入れない理由なんてどこにもないだろう?

重力には敵わない
20110820

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