腰の辺りにあたる何かに、覚醒しきらない頭が違和感を覚える。とはいえ気怠い体はまだ睡眠を求めていて、その何かから逃げるように体を前へずらすと、今度は下腹部に後ろから何かが巻きついてきた。
「ん…、?」
そのまま身体を後ろに引かれ、背中で肌と肌が触れ合うのを感じる。自分が裸だという現状をぼんやりと認識してようやく脳が活動を始めたのか、昨夜の記憶と共に現在の状況を徐々に把握していった。
そうだ、昨日は銀さんとしたまま、途中で意識を飛ばしてしまったのだ。
「ぎん、さん…」
「…あー、起きた?」
項にふさりとあたる柔らかい髪。その下の肌には銀さんの吐息を感じて少し照れくさい。服は着せられていないけれど、多分、気を失った私の身体を拭いたりとか、色々してくれたんだろうな。
「んー…おはよう…」
「はよ、つってももう昼前だけどな」
触れていただけだった唇で首筋に吸い付かれて、ぴくりと肩が跳ねる。腹部にあった少し熱い手の平はするすると上へ上がって、指先がやんわりと胸の下をくすぐってきた。
そうして私はやっと、自分の意識が覚醒した理由に思い至る。そう、腰の裏に感じていた何か、は、まさしく昨日私を蹂躙したアレ、じゃないか。
「…っ、…ちょっと、」
「なに?」
エスカレートする指の動きと、先程から隠すことなく押し付けられている熱に、はっきりと彼の意図を感じて身を捩る。信じられない、昨日あれだけしたのにまだ足りないというのかこの男は。
「…こんな、朝っぱらから、っ」
「だから、もう朝じゃねェし」
「そういうことじゃな、…、っぁ」
未だに力の入り切らない私の身体は明らかな疲労を訴えながらも、銀さんに触れられている肌はひどく敏感で、口から零れる拒絶の言葉がどこか滑稽に思えた。そんな私の反応に気を良くしたらしい銀さんが、後ろでふっと笑うような空気を感じる。
包み込むように胸を揉まれ、耳の裏を優しく舌で舐められて。甘い雰囲気にのまれて、私がその気になるまで、時間はそうかからなかった。
「いやー、銀サンもまだまだ若いよなあ」
「…っ…ば、か…、ん…っ!」
胸全体に触れていた手が、焦らすように突起のまわりをなぞり出す。先端は刺激されないままそこを摘ままれるとびりびりと神経が痺れて堪らない。
完全に彼の思惑通りに反応してしまう身体が恨めしかった、でも悔しいことに、一度疼いてしまった熱を鎮められるのはこの男だけなのだと、嫌というほど分かっていた。
「はは、…あんま煽んなって、」
病みつきの隣人
20120101