なまえが男を知らないのだと聞いたとき、俺は歓喜と興奮を覚えた。もちろん俺には人並みの経験値しかないにしろ、初めての女を抱くならやはり、特別気持ち良くしてやりたいと燃えてしまうのが男の性だろう。相手が一回りも下の女の子ならば尚更のこと、大して持ってもいないテクニックとやらの全てをつぎ込んで彼女を悦くしてやりたいし、セックスを気持ちのいいものだと、そして幸福なものだと思ってもらいたいものだ。
 緊張に固まっている彼女の身体からそっと衣服を剥ぎ取り、下着も何も全てを取り去って、全身に口付けると、彼女の肌はどこもかしこも柔らかかった。そのなかでも一等柔らかい乳房をやわやわと揉み、その先端に吸い付きながら、空いた方の片手で彼女の太腿の間を探る。胸から快感を得るのも、中で快感を得るのもまだ難しいだろうと思い、下生えの上から快感の核を指先でとんとんと軽く刺激やると、なまえははあ、と湿った吐息を漏らした。少しの間そうしたあと、割れ目に指を滑らせるとそこは僅かに泥濘み始めているようだった。溢れた粘液を指に絡ませてからもう一度上の方に戻り、今度は下生えを掻き分けて直接その核に触れる。優しく転がすようにするとなまえは何か堪らなくなったように声を出した。

「んぅ、ぁ…ま、って、」
「…んー?…気持ち良くない?」
「…わかん、な…っ」
「……そっか?」

 初めて他人から与えられる快感に戸惑っているのか、ベッドに頬を押し付け、ぎゅっと目を閉じてシーツを握りしめている彼女の額に安心させるようそっとキスを落とす。どんなに戸惑おうが、やめる気はなかった。そのキスに少し驚いた彼女とほんの一瞬目があったかと思うと、彼女はその瞳をじわりと潤ませて視線を逸らした。恥ずかしがり屋の彼女のことだから、布一枚纏わぬままこんな体勢を見られている、誰にも触られたことのないような場所を触られているということへの羞恥心は人一倍に違いない。

「だーいじょうぶ、なまえは気持ち良いことに集中して…な、?」

 頸から耳朶へと唇を這わせながらそう囁くと、彼女ははあ、と先程よりも熱い息を吐き出した。指先では、小さく腫れてきた秘部の突起を痛みのないように弄ぶ。少しずつなまえの呼吸に余裕が無くなっていくのが分かり、どくどくと心臓が鳴る。他でもない自分の手で彼女が快楽を得ているのだという感覚に、言いようもない興奮があった。
 そこを十分に濡らして、いよいよかと避妊具に手を伸ばす頃、なまえはとろんとした眼で空を見つめていた。恐がらせてはいけないと履きっぱなしだったパンツを脱ぐ。欲望に素直なそこは先端が濡れていて、少し恥ずかしいような気もしたが、彼女にはそんなことに気がつく余裕はないようだった。ゴムをつける前に、まだ完全に芯を持っているとはいえないそれを何度かそこを擦らなければならないと思っていると、ただ魅入るようにこちらを見つめている視線を感じて、俺は苦笑した。

「あんまり見んなよ、」
「……なんで?」
「なんでって…、恐くねえの」
「…そんなことないよ、…なんか、…可愛い、かな」

 そんなことを言って俺の熱の中心に手を伸ばした彼女の無邪気さが俺の脳を痺れさせた。無防備に近づいてきた細い手首を掴み、そのまま股の間で勃ち上がるそれに触れさせると彼女は驚いたように一瞬身体を強張らせたが、好奇心が勝ったのか抵抗することはなかった。彼女の手の上から自分の手をそっと重ねて自身を握り込み、「動かしてみ?」と唆すとなまえは恐る恐るといった様子で上下に手を動かした。なんとも倒錯的な状況に、下腹部が力む。

「ん、もう十分、…ありがとな」

 直ぐに十分な硬さになったそこに今度こそゴムを被せ、ぎしりとなまえに覆い被さる。片脚を抱え上げると、彼女は先ほどまでの好奇心に満ちた表情から一変して泣きそうな顔を見せた。少しでも安心させられればと片手を繋いでやると彼女の指が必死で絡みついてきたので、愛おしさと昂揚と罪悪感が綯い交ぜになって背筋を這った。折れてしまいそうなほど心もとないその手を握り返しながら、もう一方の手で狙いを定め、秘部の入り口に凶暴な熱の先端をくっ付ける。迫り来るその瞬間がやはり恐ろしいのか、彼女の身体は僅かに強張っている。
 「痛かったら言うんだぞ」とせめてもの免罪符を投げると、彼女はこくりと頷いてから、全てを見透かしたように「でも、止めないでね」と念を押した。彼女のそういう健気さが、堪らなかった。
 そのまま方向を定めてゆっくりと腰を進めると、沈み込んだ粘膜の中で直ぐに強い抵抗を感じた。それを押し破るようにぐっと力を込めると、その後はいとも簡単に飲み込まれていった。柔らかな感触に思い切り腰を揺らしたい衝動をどうにか堪えつつ、最初と変わらぬゆっくりとしたスピードで奥まで侵入を果たすと、温かい粘膜が形を確かめるようにぎゅうぎゅうと締め付けてくる。脳の回路が焼き切れそうだ。繋いでいた手はいつの間にか跡がつきそうなほど強く握られている。

「はぁ、こて、…さん、」
「っ、…ん、…がんばったな」

 溢れてしまった涙を舌で掬ってやると彼女の中がぐにゃりとうねった。骨盤が崩れるような錯覚に息を詰める。打てば響くような彼女の身体を思う存分に味わいたいと思いつつ、一先ず自分の侵入を受け入れたなまえを労わるように唇を塞ぐと、彼女の舌がそろそろと差し出される。熱いそれをじっくりと絡ませてから離れると、どちらのものともつかない唾液が糸を引いてぷつりと切れた。俺を受け入れている部分の蕩けた内壁は落ち着かなく蠢き、吸い付かれているのを感じる。
 好き、と呟く彼女にああ、俺も、と吐露して、もう一度脚を抱え直すとなまえはやはり健気に微笑んだ。この無防備で破滅的な愛らしさを世界中から囲い込み、独り占めしているのだと思うとなんとも言えない満足感が胸を満たしていく。
 しばらく馴染ませるように身体を揺すっていたが、彼女の呼吸がある程度落ち着いてきたのを見て、浅いところをとんとんと刺激すると、無意識なのか彼女がすっと逃げるように腰を引いた。その細い腰を逃さないように押さえつけて緩い抽送を続けながら、思いのほか持ち堪えられそうにない自分の下半身を叱咤して彼女のきつい締め付けを味わった。

融解して細胞は死にゆく
20190517

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