するりするりと服を剥いで、少しずつ露わになる白い肌。一気に全てを暴いてしまいたいのに、じっくりと味わいたいような気もして、僕はいつもこの幸福なジレンマに苛まれた。こうして目の前に無防備な姿で横たわる彼女が何よりも愛おしく、何よりも大切で、身動きがとれなくなるのだ。

「なまえ、」
「ん、バーナビー…」

 名前を呼ぶだけでこんなにも愛しさが伝わり、肌を合わせれば身体の熱がいとも簡単に混ざり合う。どうして僕は今までの人生を彼女無しに生きてこれたのだろう。少なくとも、彼女との空間を知ってしまった僕には到底無理だ。

「…綺麗、ですよ」
「恥ずかしいよ、…っ、…ん…」

 耳元で囁きながらキスを落とすと、なまえはきゅっと僕のシャツを掴んだ。鼓膜を揺らす濡れたような彼女の声は、僕の僅かな余裕を遠慮なく蝕む。そして眼前に広がる新雪のような彼女の肌は僕の本能的な雄の部分を煽った。
 僕だって、自分の肌が人並み以上に白いことは自覚していたが、彼女の白はまた別次元の存在として僕の視界を染めるのだった。彼女のそれは、目が眩むような白だ。透き通るような白だ。

「…っ、バーナビー…、」

 吸い付くような肌が心地良くて優しく手を滑らせていると、なまえが今にも泣き出しそうな声で僕を呼んだ。たったそれだけで僕の胸の奥はじくじくと焦げるように熱くなって、僕の方が泣きそうになる。
 なまえは綺麗だ。その内面から淡く光るような美しさが、僕の指先をいつも躊躇させる。この手が彼女を汚してしまわないか不安だった。彼女を一から十まで欠片も残さず征服したい。思うがままに蹂躙したい。そんな獰猛な感情が胸の内に潜んでいるなんて、世界で一番大切なこの人にだけは知られたくなかった。
 渦巻く感情を上手く誤魔化しながら、それでも彼女を真っ直ぐに見つめ返すと、彼女の方が恥ずかしそうにすっと目を逸らした。左右にゆらゆらと動くなまえの視線がもどかしくて、ピンクの頬を包むように手を添えると、少ししてなまえは決意したように僕を見上げた。

「……好き。…大好きだよ、バーナビー」
「…なまえ…?」
「だからね…私、バーナビーになら、何をされても嬉しいんだよ…?」

 …ああ、どうして君はそうやって、僕の真っ黒な不安を柔らかく包み込むのだろう。そんな幸せそうな顔で、僕の本性を許さないで欲しい。───愛しさが際限なく溢れ出してもう、どうしようもなくなるから。

健やかな病
20131001

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