「ほら、もっと強請りなよ」
「っつう、…ぁ…っ」
「なまえのお願いなら、何度だっていれてあげるよ?」

 後ろからぐいぐいと押し込まれるその圧倒的に大きなその質量に、呼吸さえもままならない。快感と痛みと倦怠感、そして信じられないほどの圧迫感。
 全てが許容範囲を超えていた。酸素を求めて口を開けても甘ったるい声が聞こえるだけで、いっそ自分の耳を塞いでしまいたくなる。

「も、…っやァ…ッ」
「やだって言われてもねえ」

 子宮の奥を突かれる度に身体が跳ねて、脳の何処かが焼き切れていく。腰が前へと逃げるように動くのは最早防衛反応だ。だってもうこれ以上ないくらいに奥の奥まで届いている。その先へ進まれたら、この身体も容易く壊れてしまうだろう。
 いや、彼は本当にそのつもりなのかもしれない。そう思えるほどに、神威の浮かべる表情は強い愉悦に浸っていた。まるで誰かを殺すときのような顔をしている彼は、本気で私をこのまま殺そうとしているようにしか見えなかった。

「ねえ、逃げないでよ」
「あっ…ぁ…、んっ」

 神威は逃げる私の身体を当然のように追いかけ、抑えつけ、繋がりを深くしては胎内を抉っていく。喉から零れる嬌声は最早悲鳴に近かった。
 彼の手は私の身体を固定するだけに止まらず、自分の律動に合わせて掴んだ腰を引き寄せ、より深くまで貫いてくる。肺が押し潰されるような感覚に私ははくはくと唇を動かして、必死に酸素をかき集めた。

「逃げられると追いたくなっちゃうから、サ…!」

 必死で身体を支えていた腕は、神威が一際強くナカを突き上げたその衝撃に震えて、呆気なく崩れ落ちた。無力な私はそのまま弱々しくシーツを握り締めることしか出来ない。
 そんな私を後ろから見下ろしているだろう彼は息一つ乱さないまま、長い絶頂に苛まれている私の身体を容赦なく揺すりたてる。

「…っあ、はァ…っ、あ、」
「なまえ…もう限界?」

 耳元に降ってきたいくらか優しい神威の声に、こくこくと必死で首を動した。こんな声を出す時ほど残酷な彼を何度だって見てきたのに、どうしても助けてくれと縋りたくなる。
 意志とは無関係にひくひくと痙攣する内壁からは直に神威の熱が伝わってきて、萎える様子すらないそれに何故だか熱い吐息がもれた。

「へーえ…でも残念、俺はまだまだなんだ」

 横目で辛うじて捉えたのは楽しそうにぺろりと唇を舐めた神威。獲物を捕らえて逃がさないその獣性が、恐ろしい程に夜兎らしい。

「や、っも、死んじゃ…っ…ァっ」
「だァいじょうぶ、セックスの途中で死んだりしないから」
生殖活動中に死んだら、元も子もないからネェ?

 本当の本当にこのままじゃ、呼吸も出来ないまま内臓をぐちゃぐちゃにされて、身体の全てを暴かれて、最後にはきっと殺される。頭ではそう認識出来ても、無理なのだ。この身体はどうしたって、彼の元から逃げられやしないから。

錆び付いた水晶体
20110725

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