しのぶさん。
しのぶさんがおかしいんだ。
仕事中にそわそわしている。
最初はお手洗いにでも行きたいのかなとか思ってたんだけど、そうでもないらしい。
だって、携帯電話をしきりに気にしてるもの。
そうだよね、しのぶさん、アイツのこと好きだもんね。
昨日、二人で何してたか知ってるよ。
「後藤さん、何見てるの?顔になんかついてる?」
しのぶさんがこっちを見る。
可愛い。
「んーん。ただ、可愛いなと思ってさ」
「やだ。やめてよそんな冗談」
しのぶさんがスクスクと笑って書類に目線を戻した。
決めた。
しのぶさんを、この手にいれよう。
力でねじ伏せるんじゃない。
それだと意味がないし、しのぶさんが可哀想だ。
俺はただこうして、昼行灯になってればいい。
しのぶさんの前では、しのぶさんの前では昼行灯。
最初は、しのぶさんからアイツに続く道を絶ってしまわなきゃね。
しのぶさん、しのぶさん
「しのぶさん」
「なに?」
「何でもないや」
愛してる。
fin