「しのぶさん、おかえりーって…どうしたの」

外はどしゃぶりの雨。
俺はお風呂も済ましちゃって、お酒片手にしのぶさんの帰りを待っていた。
んで、そのしのぶさんが帰ってきた訳だけど、どうも様子が変だ。
俺はビールを机におき、玄関まで駆け寄った。

「あらら、どーしたの、ずぶ濡れじゃない」

頭の先から、つま先までずぶ濡れの彼女。
とりあえずタオルを持ってこようすると、パジャマの裾を掴まれた。
やっぱり何かあったんだ…そんな事を考えてると、いきなりしのぶさんが抱きついてきた。
あまりにもいきなりだったんで、よろけて尻餅をついてしまった。

「…何かあった?」

雨水で濡れて行くパジャマ。
しのぶさんは泣いていた。
そっと頭をなでれば、肩を震わせる。

「上申書か…」

思い当たる事といえば、それくらいしかなかった。
レイバーと、その隊員達の組織改変に対する上申書をこの前上げたばかりだ。
その反発を上から食らってきたのだろう。
だが、その反発だけならしのぶさんは御立腹で済むはずだ。
ということは、しのぶさんがここまでになってしまうようなことをしたか…する予定だとちらつかせたかどちらだろう。

「ね、しのぶさん」

ありったけ優しい声でしのぶさんを呼んだ。
しのぶさんは顔を上げた。
涙でぐちゃぐちゃだ。

「一生守るからさ。だから俺について来なよ…上からも犯人からも守るし、上が邪魔なら俺が上に頑張ってのぼって、しのぶさんがしたいことさせる」

しのぶさんが、笑った。
そして、笑いながら、泣いた。

守る。
守るよ。




fin
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