港。
夜中、雲一つない。
星が瞬き月は煌々と光る。
波は静かに揺れ、月の光を跳ね返す。
「何だか…疲れちゃった」
後藤さんがため息をついた。
彼はひどくボロボロになって帰ってきた。
何かあったのは分からないけれど、私は理由を聞く代わりにそっと後藤さんの手を握った。
後藤さんはそれを察し、握り返してくれる。
「…しのぶさん」
「なあに?」
見上げると、後藤さんがくちづけてきた。
それから微笑んで
「しのぶさんが居てくれると、癒されるよ」
と言った。
私は良かったと答えたけれど、本当に後藤さんの役に立ってるのか、時々不安になる。
「もっと癒されたい」
そう言って彼は、横になり私の太腿に頭を載せた。
いつもなら叩き起こす所だけど…今日だけ特別。
「…すき」
「私もよ」
目を閉じた後藤さんの頭をそっと撫でる。
生ぬるい風がほおを撫でる。
心なしか、心地よかった。
fin
おまけ→