真夜中。
俺はクルルのラボへと出向いた。
入るなと貼り紙がしてあったが、知った事か。
中は真っ暗。
俺はあいつの寝床の襖をそっと開け、覗き込む。
クルルは眼鏡をOFFにして寝ている。
初めて見たが、寒いのか?
手足を折りたたんですやさや眠っている。
「…クルル」
やはり起きない。
「クルル、クルル」
「ほにょ…ん、先輩…」
揺すってみれば、眠気眼で起き上がるクルル。
「…こんな時間に何の用スか。あ、夜這いですか?ククーッ、先輩、夜這いは最初に起こしちゃだめなんスよ」
「アホか」
俺はクルルの頬を数回撫でた後、誘った。
「夜景」
「あ?」
「夜景、見に行かないか」
「…先輩、それどこで覚えたんスか」
本当、こいつは一言多い。
クルルは俺より若く、俺より上の上官。
その昔この性格が災いして降格されたと風の噂で聞いた。
だが、しっかりと俺の手を掴んでいるのは、お前の本音。
俺はクルルを連れ出し、フライングソーサーに乗り込み、真夜中の東京の空に繰り出した。
夜空は晴れ。
月は煌々と光り、星はまたたく。
真夜中の東京は、昼間と幾分か静かで、飛行機という地球の航空機に注意を促す赤いランプがゆっくりと点滅している。
そして一際高いあのタワーへフライングソーサーを進める。
そして、展望台とやらの上に着き、フライングソーサーから降りた。
「…どうだ。綺麗か」
「ククーッ、綺麗っス」
良かった。
俺は座り、夜景を眺める。
クルルは俺の隣に座り、ぴったりとくっついてきた。
そして少し震えている。
そういえば、ここは少し寒いな。
このデートの為に用意してきた、暖かいココアと毛布を、転送装置から取り出し、クルルに渡す。
「今日は冷えるからな。飲め」
「先輩、今日かなり優しいんスね」
クルルは素直にココアを受け取り飲み出した。
『地球には地球の綺麗な夜景がある』
たまたま夏美の部屋の前を通りかかった時、あのいけすかない326のラジオがそう言っていた。
だから来たのだが…そうか、こいつもあいつと仲が良かったんだな。
ますます気に入らない。
「クークックック」
突然クルルが笑い出した。
「どうした」
「何か、今凄くロマンチックじゃないですか。ちゅう、します?」
「!?」
正直クルルが嫌がると思ってそこまで考えて無かったが、そうかしたいのか。
「クルル、好きだ」
黄色い口に口づければ、やや柔らかい。
あまりこういうことはしたことがないからか、何だか変な気分だ。
クルルが欲しい。
「…ん」
「クルル…寒いか」
「ク、まぁ、少し寒いスね」
「ここで、あたたまるか。2人で」
「!」
クルルの顔がボッと赤くなった後、ニヤリと笑った。
「先輩、バレても知らないスからね」
「任しておけ」
真夜中のお誘い
(熱くなった体と、冷たい夜風が心地いい)